中空光ファイバーで、早期にがん診断
体内に特殊な光を当てて、がんを診断
がん治療には、早期発見が最も大切と言われています。より早期に、確実にがんを診断する方法として、体内に特殊な光を当て、はね返った光の状態を解析する医療機器が研究開発されています。
細いファイバーを体内に入れて特殊な光を当てると、がんの部分からはね返ってくる光は、ある決まった色の部分だけ弱くなることがわかっています。これは、がんが発症した部分のタンパク質が変形し、分子運動のエネルギーにずれが起こるためです。この弱くなった色からタンパク質の分子構造を分析することができ、肉眼では見えないごく初期のがんも発見できるのです。内視鏡などで組織を採って検査をする必要がないので体への負担も少なく、結果がデータ計算で出てくるので、医師の技術や経験にかかわらず、より早期にがんを発見できるようになります。
ガラスでは通せない光を通す「中空光ファイバー」
この特殊な光は、目で見える可視光線より波長が長い「赤外光」です。体内に光を入れる際には細くて柔らかいファイバーが必要ですが、光通信などに用いられているガラスファイバーは赤外光を吸収してしまうので使えません。そこで、ガラスでは通せない光を通す「中空光ファイバー」を開発しました。これはガラスやプラスチックでできた細い管で、内側には銀の鏡がコーティングされています。
血糖値の計測にも有効
中空光ファイバーと光を用いれば、血糖値の測定もできます。糖尿病などで血糖値を測定する場合、現在は指に針を刺して血液を採取しますが、日に何度もとなれば苦痛ですし、感染のリスクもあります。そこで、先端に小さな三角形のプリズムをつけたファイバーで、口の中の粘膜に光を当て、グルコースの振動エネルギーを解析すれば、血糖値を測ることができます。
中空光ファイバーと光を用いた診断システムは、現在はまだ動物実験の段階ですが、超高齢社会を迎えた今、より性能の優れた医療機器の開発は急務であり、医療現場で活躍する日もそう遠くはないでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 工学部 電気情報物理工学科 教授 松浦 祐司 先生
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