大規模システムの基盤を支える「ソフトウェア工学」

大規模システムの基盤を支える「ソフトウェア工学」

大規模なソフトウェアの品質を担保する

近年、ソフトウェアの重要性がますます高まっており、その質をどう維持・向上させるかが重要な課題となっています。実際、銀行のATMや鉄道の運行システム、行政手続きシステムの障害は、経済や社会に大きく影響します。
このような社会基盤を支える大規模なソフトウェアの開発に、安全性や効率性を保証するために欠かせないのが「ソフトウェア工学」です。

開発の効率化や使いやすさを追求

初期のプログラム作成では、個々のプログラマが手作業でコードを書いていましたが、現在では再利用可能なコードやモジュールを活用することで、効率化と品質向上を図っています。この取組みにより、大規模で複雑なソフトウェアの開発が可能になり、エラーのリスクも減少しています。その背景には、ソフトウェアの再利用に関するソフトウェア工学の研究成果があるのです。
安全性や効率性だけででなく、「ユーザが使いやすいユーザインタフェース」の追求もソフトウェア工学の一分野です。数十年前はコンピュータに何かの処理をさせるためには、特殊な命令文を覚えなければなりませんでした。それが現在のようなグラフィカルなインタフェースになったのも、ソフトウェア工学の貢献として挙げられます。

AIによるプログラムの自動生成

ソフトウェア開発において、再利用に並ぶ効率化の手法が「自動生成」です。生成AIの進化により、AIが自動でコードを生成できるようになりました。しかし、生成AIは間違いを生成する可能性があり、自動生成されたプログラムの正確性を保証するためのテスト技術も同時に必要です。そのほかにも、小規模なプログラムしか生成できない、自動生成されたプログラムの保守が難しいといった課題があり、解決に向けた研究が進められています。
これからのソフトウェア工学は、技術の進化とともにさらに革新的な解決策を生み出して、私たちの生活を支える重要な役割を果たすことでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

人間環境大学 総合環境学部 環境情報学科 教授 深澤 良彰 先生

人間環境大学 総合環境学部 環境情報学科 教授 深澤 良彰 先生

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ソフトウェア工学

メッセージ

「駕籠(かご)に乗る人、担ぐ人、そのまた草鞋(わらじ)を作る人」という言葉があります。ソフトウェアの世界に当てはめると、駕籠に乗る人はユーザ、担ぐ人はソフトウェアの開発者です。ソフトウェア工学は開発者が楽に走れる草履を作る役割を担います。世の中のすべてのソフトウェアの基盤となるもので、少しの発明が世の中に大きな影響を及ぼします。例えば、近い未来に生成AIによるプログラムの自動生成が世界を一変させるかもしれません。外からは見えづらいのですが重要でやりがいのある分野です。

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人間環境大学は、「いのち」、「こころ」、「環境」の未来を創造するために、知識と技能、そして自ら考えて行動する力を養い、それにかかわる実践力を身につけた人材を輩出しています。人を知り、人に学び、人のためになる自分へと成長できる大学、それが人間環境大学です。2022年4月、新たに愛媛県松山市に「総合心理学部」、愛知県岡崎市に「心理学部」「環境科学部」が開設、5学部7学科の大学となり、ますます個性あふれる特色豊かな大学へと進化します。