なぜ汗や心拍、脳の活動から犯人を見破ることができるのか
ポリグラフ検査が調べていること
ポリグラフ検査は、汗や呼吸、心拍といった自律神経の反応を見て、目の前の被疑者が犯人なのか無実の人なのかを鑑定しています。例えば果物ナイフを使った殺人事件があったとき、果物ナイフを包丁やハサミ、カッターといった無関係なものと一緒に並べて反応を見ます。どの凶器が使われたのかを知る人だと、最初の5秒で汗腺の活動が上がり、続いて呼吸が少なくなり、心臓の動きが遅くなります。交感神経の働きにより汗の活動が上がるのに対し、副交感神経はリラックスさせようと、呼吸や心拍数を抑制するからです。
犯人ならではの脳活動がある
犯罪を隠そうとするとき、脳もまた活動しています。頭に赤外線を当て質問に回答するまでの反応を見ると、犯人であれば記憶をつかさどる側頭葉や複雑な認知処理を行う前頭葉が活発化します。自然と事件の記憶を呼び起こし、もし見破られたらどんな罰を受けるか、どうしたら逃れることができるかと脳を働かせるからです。
自律神経の反応だけでも犯人なら90%以上、無実の人なら100%近く判断できますが、自律神経には個人差があり、生まれつき呼吸の弱い人や汗をかきにくい人もいます。またサイコパスの人は、交感神経由来の反応が出にくいことが知られています。そうした人でも脳は活動するため、検査によってポリグラフ検査だけではわからない部分を補うことができます。
脳活動を調べることで生まれる可能性
脳の活動を見ることで、犯罪捜査以外でも、例えば人が抱いている潜在的な態度も読み取ることができます。私たちの心の仕組みは複雑で、自分で意識できる部分はそれほど多くはありません。しかし、適切に組み立てた実験を通じて、意識できていない部分も脳の活動として見ることができるのです。
他に、脳活動の検査を診断の補助に使えないかということも考えられています。何らかの認知課題に取り組んだとき健常者とうつ病患者では脳活動に違いがあります。
脳の活動を見ることは、犯罪だけでなく私たちの心全般の理解に繋がるのです。
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先生情報 / 大学情報
人間環境大学 総合心理学部 総合犯罪心理学科 講師 新岡 陽光 先生
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