サルは夜に動いている? 観察で感じた「なぜ?」を解明しよう
夜の森を「暗視カメラ」で撮影してみると
屋久島の森に生息するニホンザルは、夜になると5頭くらいの集団になって眠っています。そこにニホンジカが近づいてきました。サルはシカに気づいてみんなで移動し、シカはそこに残されたサルの糞を食べています。暗視カメラによる撮影によって、シカはサルが夜間に排泄する糞を狙ってサルに近づき、サルはそのシカを避けるために、場所を変えながら夜を過ごしてることが分かったのです。私たちは布団やベッドで眠りにつくと、朝まで同じ場所で眠り続けますが、ニホンザルは違ったのです。ヒトと進化的に近縁な霊長類を研究することは、私たち自身の特異性を知ることにもつながります。
会いたいのに会えないことも
日本の霊長類学は、1948年に宮崎県幸島に生息するニホンザルの調査から始まりました。初期の研究は、餌付けをして観察していました。しかし、餌付けによる弊害が認識されるようになったため、1970年頃から餌付けを行わず、自然環境の中で野生のニホンザルを対象とした研究も行われるようになり、現在に至っています。広い森の中では、お目当ての個体にすぐ出会えるわけではありません。そのため、観察者は群れの行動圏や行動パターンからサルの居場所を推測したり、よく採食に使っている木の近くで待ち伏せするなどの工夫をしています。
「分かっていないこと」はまだある
これまでの研究でニホンザルの基本的な生態は分かってきました。しかし、例えば、群れのメンバーは1日の中で近くにいたり、遠くに離れていたりしますが、どのようにして離れたメンバー同士が集まるのかといった細かなメカニズムは分かっていません。また、野生のニホンザルの調査地は全国にいくつかありますが、例えば「眠る場所」にしても、地面で集まって眠るだけでなく、樹上や洞窟で眠るなど地域によって異なります。これまで主要な調査地になっていなかった四国など、今後もさまざまな地域でサルの生態研究は進んでいくでしょう。
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