生体情報をウェアラブル機器で計測する技術
日常における生体情報計測の難しさ
脈波、体温、心拍などの健康につながる生体情報を常時取得することができれば、医療では患者の状態が把握でき、スポーツならば選手の体調や運動効果などを知ることができ、人々の健康管理ができます。しかし、日常での活動時にこれらの情報を正確に取得することは簡単ではありません。意識的に専用端末をつける必要がある上、動きによって乱れが生じてしまい、得た情報の信頼性が低くなるからです。これらを解決するため、日常で着用・使用しているモノを用いて無意識的に生体情報が計測できるシステム、および情報処理技術の開発が進んでいます。
イヤホンにセンサーを組み込む
例えば、イヤホンを用いた、耳から脈波や体温を計測するシステムです。耳は手や足より動きが少ないし、音楽を聴きながら無意識的に生体情報の計測ができます。脈波計測は、光を用いて血管の中を流れる血液量を測る技術です。つまり、赤血球などの血中成分が光を吸収するので、皮膚に光を照射し、体内を透過・反射する光を検出します。この光は、心拍動にともなう血液量の変動で、心拍がわかります。また、吸光度の差から血中グルコースなどの情報も把握でき、糖尿病治療に役立つと考えられています。体温計測は、鼓膜周辺の温度を測る技術です。最近、夏の異常高温による熱中症で倒れる人が多いので、体温が常時計測できれば、熱中症予防に役立つでしょう。
スマートグラスだけで常時モニタリング
心拍は、「スマートグラス(メガネ型の端末)」に電極を組み込むことでも計測可能です。問題は心臓から遠い位置で計測するため、脳波や筋電位などほかの情報も同時に取得してしまい、切り分けが難しいことです。この問題は周波数や波形の特徴を分析し、人工知能(AI)を用いた情報処理で解決できると考えられています。
スマートグラスを用いた生体情報計測はこれからの分野ですが、フレキシブル材料を用いたデバイスやAIを用いた情報処理技術開発などはめざましく、関連する分野も広いので発展が期待されています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
福岡工業大学 情報工学部 情報システム工学科 助教 李 知炯 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
情報システム工学、生体情報計測工学先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?