人間にとって知覚とは何かを探る「知覚心理学」
人間の視覚と感覚の不思議
私たちの視覚には、不思議な部分がたくさんあります。映画や写真は2次元なのに、私たちはそれを3次元と認識します。その一方で、3次元で表現するVR(バーチャルリアリティ)は、楽しめる人と不快に思う人がいて、3Dテレビは、今はほぼ姿を消しています。果たして本当に3D映像は必要なのか、快適に見られるようにするには何が必要かという疑問が湧いてきます。
例えば、写真や肖像画のなかの人物を見たとします。その人物は正面を見ているのに、それを見る側の私たちが正面から見ても少し横から見ても、こちらを見ているかのように感じます。それは人物の白目と黒目の比率が変わらないからです。生身の人間の場合は比率が変わるので、それによって相手がこちらを見ているか見ていないかを、私たちは無意識に判別しているのです。
美しさ、快適さを感じる心理メカニズムとは
こうした人間の知覚と心の関係を研究するのが、「知覚心理学」です。1点を見つめ続けるとわかりますが、人間の目に見えているのは、実際には視点の先のごく狭い部分です。網膜に取り込める画像も、ごく限られた一部です。それでも私たちは眼球を動かして全体像をとらえ、脳の働きによって立体として認識し、美しいとか鮮やかだといった印象を持つのです。知覚心理学では、何によって美しいとか、快適や不快という感覚をもつのかなども、1つひとつ細かく設定を変えながら心理学的な実験法を用いて検証していきます。アルゴリズム(手順や計算方法)といったサイエンスの手法を用いて、人間がどう認識するのかという心理の本質に迫る研究です。
人間とは何かを知覚から探究
そもそも生きていく上で、人間はなぜそうした感覚を持ち得たのでしょうか。芸術や技術は人間だけが行う営みですが、それはなぜかといった考察も不可欠となります。知覚と脳、心は密接に関連しています。これらが解明されていくと、快適な空間づくりや3次元映像の最適化など、幅広い分野で活用できるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
人間環境大学 総合心理学部 総合心理学科 教授 佐藤 隆夫 先生
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