音楽が頭の中でループする-心のはたらきに迫る認知心理学

音楽が頭の中でループする-心のはたらきに迫る認知心理学

頭の中で流れ続ける「あの曲」

日常生活において、ふとした瞬間に頭の中で無意識に音楽が流れることがあります。ときにそれは、試験勉強などの集中したいときに限って繰り返し流れてしまうこともあるでしょう。この「イヤーワーム(耳の虫)」と呼ばれる現象が、どのように現れるかを実験した研究があります。

音楽はどういうときに流れるの?

実験では、参加者に歌詞付きの音楽を何度も聞かせてから、2種類の作業をしてもらいます。一つは単語の穴埋め問題といった「言語的な作業」で、もう一つは迷路ゲームを解く「非言語的な作業」です。その後、作業中や休憩中に、音楽が頭の中をどのくらい流れたかや、その音楽が歌詞付きだったかどうかを答えてもらいます。
すると、言語的な作業中は、頭の中に音楽が流れることはあっても、それが歌詞付きのものである割合は低くなることがわかりました。これは言語的な作業が、歌詞のための言語処理にバッティングして歌詞の再生を妨げたと考えられます。さらに、参加者の多くは作業中よりも休憩中に、頭の中に音楽が流れやすかったと回答しました。これは集中力を必要としない、リラックスした状態のときに音楽が流れる傾向があることを示しています。

心のはたらきを知り、応用すると

このような、人間がどうやって情報を処理して理解するかといった「心のはたらき」を研究するのが、認知心理学という学問です。「人間の心はどうはたらいているか」という、根源的な問いのもとに進められる研究です。学校や勉強場面においては効果的な学習方法を導き出したり、職場の生産性を向上させるBGMを選定したり、音楽で心地よく感じられる空間をつくったりといった応用も期待されます。また、人間の心のはたらきには脳科学の要素も含まれるため、実験で脳を測定する研究者も数多く出てきており、認知心理学の世界的なトレンドとなってきています。さまざまなアプローチが模索され、研究が活発な学問だと言えるでしょう。

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青森公立大学 経営経済学部  教授(学部長) 鈴木 郁生 先生

青森公立大学 経営経済学部 教授(学部長) 鈴木 郁生 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

認知心理学、教育心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

今自分が持つ知識や経験がすべてだと思わずに、さまざまなことを吸収してほしいです。例えば心理学というと、高校生の段階ではカウンセラーの仕事につながる「臨床心理学」を身近に感じているかもしれません。しかし、大学ではこのほかにも、「ものを見る」「覚える」「考える」といった人の心の基本的なはたらきを研究する「認知心理学」なども学べます。心理学に限りませんが、さまざまな学びに触れることで自分の中の引き出しを増やして、大学で深く学びたいことを見つけていきましょう。

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青森公立大学経営経済学部は、全国的にも数少ない「経営」「経済」「地域」を融合させ、多様なものの見方や実践的な姿勢・能力を養う学部です。
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