「美しい」とは何か デザインを言語化する

「美しい」とは何か デザインを言語化する

建築デザインの美

古来より建築には「強・用・美」という3つの要素が求められてきました。すべての建築の基礎となるのは、安全な構造を作り出す「強」、次に重要なのは「用」としての機能です。暑さ寒さをしのぐ、使いやすいなどの肉体的に感じる快適さを満足させることも含みます。また、「強」と「用」が満たされただけでは良い建築とは言えず、芸術性といった視覚的に快適な「美」も求められます。では人々はどの様なデザインに「美」を感じるのでしょうか?

美しさのキーワードを採取する

「美しい」「かっこいい」「素敵」という形容詞は個人的な趣向のように捉えられがちですが、そこには一定の共通項が存在しています。そこで人が良いと感じる建築や空間の写真をサンプルとして集め、それらがどの様な構成要素で成り立っているのかをサンプルの写真の美しさを説明する語句から分析していきます。形状、色彩、テクスチャ、空間構成といった要素ごとに、直線的、カラフル、光沢感、広々としているなどの様々なキーワードがあり、これらに共通した事項を探すことで、どのような要素が美しさと関係しているのかがわかってきます。文化的な背景や年代などの属性によって異なる傾向がありながらも、全体的には「生の躍動」と「死の尊厳」からくるイメージが美的評価に関連していると考えられます。躍動的で複雑なものや、華やかな色づかい、有機的な形状は「生の躍動」が感じられるデザイン、白や黒の無地や装飾を省いたシンプルな形状は「死の尊厳」が感じられるデザインと言えるでしょう。

時代ごとの美しさ

このような要素を意識してデザインすることで、美しさを兼ね備えたデザインになり易いと考えられます。ただし、デザインは常に新しい物が求められる傾向にあり、美しさの要素は時代とともに常に変わるものです。ヨーロッパの建築様式が、複雑で有機的なゴシックからシンプルで古典的なルネサンス、そしてまた有機的なバロックへと変わっていったように、常に前の時代と違う要素を求めながら、デザインは変化していきます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

鹿児島大学 工学部 建築学科 建築学プログラム 准教授 柴田 晃宏 先生

鹿児島大学 工学部 建築学科 建築学プログラム 准教授 柴田 晃宏 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

工学、建築学、芸術学、心理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

あなたが今、やりたいと思っていることは、おそらく今知っている知識の中だけでの選択でしかありません。私は中高生の頃は漫画家になりたかったのですが、大学での勉強を経て建築にのめり込んでいきました。夢は変わっても、美しいものを作って人を感動させたいという根幹は変わっていません。
興味のあることの本質は何なのかを考え、自分の状況下での最良を探してください。「何々でなければ駄目だ」と固執して考えるのではなく、頭を柔らかくして考える視野を持ちましょう。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

鹿児島大学に関心を持ったあなたは

鹿児島大学は、日本列島の南に位置し、アジアの諸地域に開かれ、海と火山と島々からなる豊かな自然環境に恵まれた地にあります。この地は、我が国の変革と近代化を推進する過程で、多くの困難に果敢に挑戦する人材を育成してきました。このような地理的特性と教育的伝統を踏まえ、鹿児島大学は、学問の自由と多様性を堅持しつつ、自主自律と進取の精神を尊重し、地域とともに社会の発展に貢献する総合大学をめざします。