デザインを工夫することで、人間の行動は大きく変わる!
人の行動を促す考え方
人間はある情報を受け取ることで、感情が動き、行動を変えることがあります。認知心理学や、視覚心理学、行動経済学などさまざまな分野で、人間の行動の傾向を明らかにするような研究がされています。それらの知見をもとに、形やルールをデザインすることで、人間の行動をうまく促すことができます。ゴミを正しく捨ててほしい、交通ルールを守ってほしいなど、デザインには必ず目的があります。デザイナーは、形の美しさといった表現の領域と、それを見た後の人間の行動を結びつけて考える必要があるのです。
言葉よりも雄弁に
「冷蔵庫にブドウがあるからみんなで食べて」とメモが貼られているとします。大きなブドウがそのまま1房置いてあるときと、実を均等にいくつかのカップに分けて、「一人1カップ取ってください」と書かれていたときと、どちらが手に取りやすいでしょうか。どうやって分けたらいいのか迷う気持ちや、食べ過ぎたら申し訳ないと遠慮する気持ちなどの心理的なハードルを下げることで、気持ちよく食べてもらうことができます。
相手の気持ちを想像できないと、いいデザインはできません。いいデザインをすることにより、言葉で注意や禁止を呼びかけるという方法ではなく、心地よく問題を解決することができるのです。
人間を深く理解し、デザインの力で問題に対処する
例えば交通システムのデザインを考えてみると、電車や座席の形のほかにも、発着の情報をどうやってスムーズに伝えるか、ルールやマナーをどうやって守ってもらうかなど、さまざまな問題が複合して存在しています。これらの複雑な問題を解決するためには、心地よさや美しさといった感性、情報の理解、身体の動かし方など、人間の仕組みを理解してデザインしていくことが重要になります。デザインとは世の中を良くするための強力な道具になり得るものです。さまざまな分野の知識を背景に、美学を持って問題を解決していくのがデザイナーの仕事です。
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先生情報 / 大学情報
多摩美術大学 美術学部 統合デザイン学科 准教授 菅 俊一 先生
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