災害から社会の未来を考える

災害から社会の未来を考える

災害社会学とは

将来の暮らしを考えるとき、どの地域に住んでも災害は起こるものです。災害には地震や台風といった自然災害だけでなく、火災や航空機事故といった産業災害なども含まれます。
社会学には、災害を通じて社会のあり方を考える「災害社会学」という研究分野があります。研究は被災した地域に関するデータや、被災地で暮らす人々へのアンケートを統計的に分析するなどした「量的調査」と、インタビューなど「質的調査」を組み合わせて進められます。アンケートで全体の傾向を俯瞰(ふかん)的にとらえ、インタビューなどを通じて、被災した人々の身に起こることや、本人たちが感じることへの具体的な理解を深めていくのです。被災した人々と一緒に活動しながら研究する「アクション・リサーチ」の形を取ることも多いです。

五感で体験する継続的なフィールドワーク

現場を訪れ調査するフィールドワークでは、土地の様子を五感で体験することも重要です。東日本大震災から間もなく、岩手県大槌(おおつち)町で行われた調査では「におい」と「音」も大事されました。津波でできた沼地が発する海水の腐ったにおいや、水産加工場から散らばった魚に群がるハエの羽音など、このような体験も、被災地の人たちが抱える思いを理解する助けになります。またインタビューも1回で終わることなく、ある程度の時間を置きながら同じ人に継続して話を聞くことで、暮らしや気持ちの変化を把握できます。インタビューを重ねることで、相手との信頼関係ができたり共通認識が増えたりすることも、研究における大きな力となります。

被災した人々と地域に寄り添う想像力

災害からの歩みを知る上で欠かせないのは、相手に対する「想像力」です。復興工事が進むにつれてまちは新しくなります。人々の暮らしに楽しみや落ち着きが増えてきます。しかし、人々から辛い災害の記憶が消えることはありません。被災した人たちの心は「ゆらぎ」続けます。想像力をもって多面的に人々の暮らしや心を理解し、未来につなげていくのが災害社会学なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

青森公立大学 経営経済学部 地域みらい学科 准教授 野坂 真 先生

青森公立大学 経営経済学部 地域みらい学科 准教授 野坂 真 先生

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災害社会学、地域社会学、社会調査法

先生が目指すSDGs

メッセージ

自分の暮らしが、どのようなリスクの上に成り立っているかを考えてみましょう。現代において、災害はどの地域に居ても避けられません。山が近い村落は土砂災害の、都市は新型コロナなど感染症のリスクが大きいなど、それぞれの地域に特有のリスクがあるはずです。リスクのあり方がわかれば、未来に向けた対策が立てられます。また、自分の暮らしへの理解は、自分自身への理解にもつながります。自分を理解する力は、他者に対する想像力や理解力の向上にも役立ちます。社会学を学ぶことで、自分を理解する力が身に付くかもしれません。

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青森公立大学経営経済学部は、全国的にも数少ない「経営」「経済」「地域」を融合させ、多様なものの見方や実践的な姿勢・能力を養う学部です。
資源の組織化を通じた新たな価値の創造に着目するのが「経営」であり、それらの取引が行われる市場に着目するのが「経済」であり、それら諸活動が展開される現場に目を向けるのが「地域」です。
本学部は、地域に生き、自らを成長させつつ、社会にも貢献したい皆さんの期待に応えます。