若者は、なぜ怒った顔が気になるのか?
笑顔より怒った顔に反応する高校生
人は、笑ったり、怒ったり、いろいろな表情をします。その中であなたが一番気になるのはどんな表情でしょうか? 大学生を集めて、「にこにこ顔」「怒った顔」「無表情」の3つを見せて実験したところ、「怒った顔」に一番注意が向くことがわかりました。その理由は生存本能がよく働いて、自分に危害を与えそうな人から「逃げるか闘うか」を選ぶために、「怒った顔」に注意が向くのではないかと考えられます。では高齢者はどうかといえば、「にこにこ顔」に一番注意が向きました。高齢者になると体力が落ち、闘ったり逃げたりするよりも仲良くする方法を選ぶからではないかと考えられます。
「パっと見る」と「じっくり見る」の違い
瞬間的に表情を見る実験では上記の結果が出たのですが、感情をともなってじっくり表情を見るとどうでしょうか? 今度は、うれしい気持ちになる文章と、嫌な気持ちになる文章をそれぞれ聞かせた後に、3つの表情をじっくり見て自分の感情に合うものを選ぶ実験をしました。すると学生も高齢者も「にこにこ顔」に一番注意が向きました。それも「怒った顔」よりも「にこにこ顔」のほうが選ぶ速度が速かったのです。このように瞬間的に見るのと、じっくり見るのでは、人の認知が違うことがわかりました。
低次の認知と高次の認知がある
人は、顔を認知する時、目から情報を入れて、脳の視覚野に伝えます。実は、顔を認知する専門の脳があって、顔を顔と認知するのは簡単なことなのです。例えば丸に点が2つあるだけで、顔として認知する癖専門の脳が人にはあります。このような単純な認知を「低次」の認知と言います。それに対して、「あの人は優しそうだ」とか「怖そうだ」とか、感情をともなったり、記憶を想起して照合したりする深い処理を「高次」の認知と言います。年齢によって認知は変化していきます。高齢者は丸暗記などの記憶力が落ちますが、知恵や語彙能力など伸びる認知機能もたくさんあるのです。
参考資料
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愛知淑徳大学 心理学部 心理学科 教授 坂田 陽子 先生
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