顔の印象が、記憶や認知判断に及ぼす影響とは?
顔の表情から印象を感じている
「この人は有能そう」などといった第一印象を、私たちは顔を見ただけで判断しています。顔の見た目から「この人は有能そう」という印象を与える政治家は、多くの票を得て当選しているという研究結果も報告されています。人は見た目から、自動的に性格や能力まで推測してしまうのです。それがある種の差別につながるのではないかという指摘もあります。しかし、有能そうな印象を受けたからといって、本当にその人が有能であるかどうかは別の問題です。実際には、顔から受ける印象だけでは内面まで正確に判断することはできないのです。
見ているのはパーツではなく顔全体
顔から感じる印象は、目や鼻や口といったパーツではなく、顔全体から知覚されるものです。2歳から6歳の幼児に対する実験では、その人がいい人そうかどうかについて、比較的小さい頃から大人と同じように判断できることがわかっています。赤ちゃんも信頼感が高くいい人そうに見える人をより長く見ているという研究結果があります。いい人そうに見える人に近寄ることで保護してもらえるという、本能的な生存戦略があるのかもしれません。
「感性的な認知」と「物理的な認知」に関連性は?
「赤ちゃんから大人に至るまで、顔に対する感性的な認知がどのように発達していくのか」、また「物体の色や形、デザインといった物理的な情報が人にどのような印象を与えるのか」、「両者の間に関連性や共通性はあるのか」ということについての研究が進んでいます。これまでは物体の認知と顔の認知は別のものだと考えられていましたが、実は関連性があるのではないかという視点から、新しく認知心理学的な知見が得られるかもしれないのです。
人は見た目で判断しがちです。しかしそれは偏った見方に過ぎません。人は見た目だけでは中身まで正確に判断できるわけではないことを、誰もがわきまえておくことが必要です。
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先生情報 / 大学情報
実践女子大学 生活科学部 生活文化学科 准教授 作田 由衣子 先生
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