ケーブル不要の世界へ! 電波で電力を運ぶ「無線電力伝送」

ケーブル不要の世界へ! 電波で電力を運ぶ「無線電力伝送」

電波がエネルギーを運ぶ時代に

ラジオやテレビ、スマートフォンの通信に使われる電波は、実はエネルギーそのものです。電力を電波に変えて飛ばし、受けた側でまた電力に変換すれば、電波を「電力の運搬手段」として利用できます。この技術は「無線電力伝送」と呼ばれ、ケーブルが使えない場所に電力を送る手段として期待されています。例えば、工場内の機械や、洋上風力発電から船へのワイヤレス送電などが考えられています。また、月面探査ロボットへの給電も計画されており、2028年から2030年頃には実証実験が始まる予定です。バッテリー交換なしで半永久的に動く月面ロボットが実現するかもしれません。

次世代を担うガリウムナイトライド

無線電力伝送には、電気を高周波の電波に変えたり、逆に受信した電波を再び使える電気に戻したりする、高性能な半導体が必要です。その材料として注目されているのが「ガリウムナイトライド」です。ガリウムナイトライドは、高い電圧に耐えながらも電子を高速で動かせる特性を持っており、高効率な電力変換に適しています。ガリウムナイトライド半導体が、将来の通信インフラやエネルギー供給の形も大きく変えるかもしれません。

新しい材料としての課題

宇宙空間では、地球上とは比較にならないほどの多くの放射線が飛び交っています。こうした放射線は半導体にダメージを与え、性能の劣化や故障を引き起こします。そこで、放射線に強い材料の開発や、半導体が放射線にさらされたときにどのような変化が起こるのかを調べる研究も進められています。
また、ガリウムナイトライドなどの新しい半導体材料は、シリコンのように完全な結晶を作ることは難しく、わずかな原子のズレや欠陥(原子が本来あるべきところにない穴のようなもの)を多く含んでしまいます。こうした微細な構造の乱れが、性能にどのような影響を与えるのかを光学的・電気的に評価して、正しく理解することも重要です。これにより、材料の弱点を補いながら、より信頼性の高い半導体を実現する道が開かれていきます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

熊本大学 工学部 半導体デバイス工学課程 教授 分島 彰男 先生

熊本大学工学部 半導体デバイス工学課程 教授分島 彰男 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

半導体、電気電子工学、量子力学

先生が目指すSDGs

メッセージ

半導体は、それ自体は「石ころ」のようなもので、使われて初めて価値が生まれます。大切なのは「どうやって社会に貢献できるか」を考えることです。「こんな社会をつくりたい」という思いがあれば、「そのためにはどんな半導体が必要か」という発想につながります。逆に「こんな半導体ができたら、どんな社会が実現できるだろう」と考えるのも面白いでしょう。これはどんな分野でも同じです。あなたのアイデアが、未来の社会を変えていくかもしれません。その可能性を念頭に、大学での学びに進んでください。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

熊本大学に関心を持ったあなたは

熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。