木材を強化して木造高層ビルを建てる!
日本の森林資源がピンチ?
木材生産用の人工林を持続的に管理していくためには、木が成長する量と木材として利用する量のバランスを保つことが大切です。成長量よりも利用量が多いとはげ山になってしまいますが、反対に利用量が少なくても木が育ちすぎて木材として使いにくくなってしまいます。現在の日本では、木材の利用量が木の成長量の4割程度にとどまっています。そこで木材の利用量を増やし、植林と伐採の健全なサイクルを作るために、住宅だけでなく大規模な公共建築物やビルなどにも木材を積極的に使う取り組みが、国を挙げて進められています。
大きな建築物を作る際に重要となるのが、木材と木材をつなぐ接合部の強度です。この強度を上げる研究が行われています。
木材を樹脂で強化
接合部を強化するには、そこに使う部材を大きくするという方法もありますが、コストなどの面で常に採用できるとは限りません。そこで使う部材はそのままで、部分的に強度を上げる技術が研究されています。
木材を構成する細胞は死んで中身がなくなっているので、木材の内部にはミクロのスケールの空洞がたくさんあります。ボルトなどと接触する接合部の木材が変形してしまうのは、荷重でこの空洞が押しつぶされるためです。そこで、あらかじめこの空洞を樹脂で埋めてつぶれにくくするのです。樹脂で強化する技術はこれまでにもありましたが、木材の切り口からボルト周辺まで全体的に樹脂をしみ込ませていたので非効率的でした。それに対して新しく開発された技術では、ボルトが当たる部分にレーザーで直径100マイクロメートル以下の穴を開けて樹脂をしみ込ませるため、使う樹脂も圧倒的に少なく効率的です。
最適な技法を模索中
この技術の実用化に向けて、接合部の強化に最適な樹脂の種類や、開ける穴の深さなどを調べる実験が重ねられています。また、ボルト以外にも木材の細胞が壊れるような荷重のパターンを検証して、その補強に樹脂を詰める技術を応用していくことも進められています。
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先生情報 / 大学情報
静岡大学 農学部 生物資源科学科 助教 小川 敬多 先生
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