日本が誇る資源、森林を活用して持続可能な循環社会をめざす
意外に知られていない日本の森林の実態
地球の森林を守ろう。無駄な木材の使い方を止めよう。その意識は間違いではありません。世界的に見れば森林は確かに減少し、病害虫や火災、過剰伐採などによる砂漠化が進んでいます。ところが日本の事情は少し違うのです。
日本は国土の約7割を森林が占めています。古来日本では、木材資源を燃料や建物などさまざまな形で活用してきました。過度な燃料利用や戦争により、当時は禿山(はげやま)のような森林が多くありました。戦後、禿山になった森林を再生しようと各地で積極的な植林が行われました。
健康的な成長には伐ることも大切
一方で、海外から安価な木材が輸入され、鉄やコンクリート、新建材が普及し、私たちは国内の森林資源に頼らなくても生活が可能になりました。そのため植林された木々は成長期に間引きや伐採などの手がかけられず、密生しすぎてモヤシのようにひょろひょろと育ってしまいました。日本の国土は斜面地が多いので、木が弱々しいと雨水が土中にうまく蓄えられずに流れてしまい、土砂災害を引き起こす危険もあります。つまり森林は言わば「緑のダム」なのです。豊かな緑の恩恵を得て自然生態系のバランスを保つには手入れが欠かせません。
資源を使い育てるサイクル作りを
森林をよい状態にするには、伐った木の経済的な受け皿が必要です。きちんと使い方を考えて経済活動に組み込めば、林業が活性化し次世代の森林育成につながります。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、国民1人当たりの国内総生産が1万ドル以上かつ森林の割合が国土の6割以上の国は、日本のほかにスウェーデン、フィンランド、韓国だけです。日本は工業先進国であると同時に、世界に誇る素晴らしい森林資源を持っているのです。資源がない国とよく言われますが、それは化石資源がないだけのことです。木を植え、育て、伐り、材料として使い、また再利用し、最後には焼却してエネルギーを得るという循環サイクルで、地球が今より健康だった時代を再びめざすこともできるのです。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 農学部 生物環境科学科 木材工学研究室 教授 山崎 真理子 先生
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