土木工事に木材を使おう! 経済と環境への影響を評価する

土木工事に木材を使おう! 経済と環境への影響を評価する

木材と土木の歴史

400年前、イタリアのベネチアでは建物の基礎に木のくいを用いました。日本でも東京で1923年に建設された旧丸ビルの地盤改良に木ぐいを用いています。しかし、現代の土木工事は鉄やコンクリートが主流となり、木材の利用はごくわずかです。そして、その多くが輸入材であり、日本の木材自給率は40%程度にとどまっています。林野庁は国産材の活用が地域経済の活性化につながると示しているものの、進展していません。こうした課題を解決するために、木材の土木利用が経済や環境に与える影響を定量的に評価する指標が開発されました。

治山ダムと木材利用の可能性

コンクリート製の土木構造物を木材で代替する方法を考えたときに、もっとも取り組みやすいのが「治山ダム」です。治山ダムは渓流の不安定な土砂の流出を抑える役割を持つ構造物で、木材を使っても十分な効果が期待できます。その建設費を算定すると、コンクリート製に比べて木材を用いた方がやや高くなります。しかし、地域の木材を活用することで、伐採・運搬・製造といった多くの産業が関わるため、地域経済の活性化につながると評価できます。
木材とコンクリートの大きな違いは「炭素の固定量」です。木材は使用されることで炭素を貯蔵し、炭素循環を促進する役割を果たします。そのため、環境面での評価においても木材の優位性が示せます。

木材利用の評価と未来

現在、公共事業の入札は主に建設費を基準に行われていますが、将来的には環境への影響やその他の付加価値も考慮されるべきです。そのためには、定量的な評価手法を確立して、実際の入札に反映されることが求められます。その点、この定量的評価には、各都道府県のオープンデータである各産業間の取引を数値で示した「産業連関分析」を用いているため、誰でも再現性の高い評価が行えます。この手法を活用し、木材利用の経済的・環境的な価値を明確に示すことで、国産材を活用した土木工事が進む第一歩となるでしょう。

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長野大学 共創情報科学部(仮称) ※2026年4月設置構想中  准教授 藤田 智郁 先生

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森林科学、土木環境工学、地域経済学

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メッセージ

教養はとても大切です。例えば、木材を柔らかくする方法を考えてみましょう。ニンジンを柔らかくするには熱を加えます。木材も同じく植物なので、実は熱を加えると柔らかくなるのです。これは、工芸品の「曲げわっぱ」にも使われる技術です。教養があれば、こうした発想が自然に出ます。高校の勉強は単なる知識の詰め込みではなく、研究や未来の仕事につながる基礎になります。また、映画や漫画などさまざまな文化に触れることも教養を深める一つの方法です。ぜひ、幅広い知識を大切にしてください。

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長野大学は、1966年に地域の熱い期待を背負って誕生した「地域立」の大学です。本学は地域にある課題を発見し、地域とともに解決していく実践的な学びを大切にしています。地域には豊かな自然環境や歴史が宿る文化遺産、経済を牽引する産業や観光資源、安心して暮らせるまちづくりなど学びの要素があふれています。地域社会をフィールドに、主体的に考える力や、問題に対して多面的に取り組む力を養いながら漠然とした問題を明確化し、逆境に立ち向かっていける足腰の強い人材を育成します。