日本が世界に誇る「森林資源」を暮らしに生かす
日本は世界有数の資源保有国
日本は資源の少ない国と言われますが、実はそうではありません。国土の約7割を森林が占める、世界有数の森林資源保有国です。OECD(経済協力開発機構)加盟国で、国民1人当たりの国内総生産が1万ドル以上の国は34カ国、その中で森林が国土の6割以上ある国は、日本のほかにスウェーデン、フィンランド、韓国だけです。日本は工業先進国であると同時に、世界に誇る森林資源を持つ国でもあるのです。
材料としての木を科学する
木を材料として長く使い続けるためには、強度や耐久性など性能を科学的に評価する必要があります。ところが木は生き物ですから、そっくり同じものは二つとありません。ですから例えばヒノキやマツ、スギなど樹種ごとの性能を導き出そうとする場合、膨大な数の木を調査してデータを蓄積しなければ、真の姿は見えてこないのです。
さらに木材は年月を経るとどのように変化するのか、解明されていないことがまだたくさんあります。伐採後に保管され古木材となった場合と、建築材として長年使われて荷重や張力がかかっていた場合とではどのような差が出るのかなど、よくわかっていません。
森林資源が循環する社会をめざして
しかし近年、木材研究者が集めたデータからシミュレーションを行い、建物に使われている木材の強度特性を計算することができるようになりました。この成果は、寺社や古民家など伝統的な木造建築の調査や修復に大いに役立っています。
木は人間が想像もつかないような巧妙なメカニズムを持っています。金属やコンクリートなどのように、人間の目的に応じて性質をコントロールできるわけではありませんが、日本では古くから培われた知恵と技で、木材をさまざまな用途に活用してきました。化石資源が残り少ないと言われている今、人類の生活と自然生態系とのバランスをとりながら、資源を循環させることが求められています。生物材料工学では、そのような社会をめざして木の性能を科学的に解明し、私たちの生活にいかに生かすかを研究しているのです。
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先生情報 / 大学情報
名古屋大学 農学部 生物環境科学科 木材工学研究室 教授 山崎 真理子 先生
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