空間や図形を不変量で調べる「代数トポロジー」の世界

「代数」で図形や空間の性質を調べる
中学や高校で学ぶ初等幾何では、「長さ」や「角度」を使って図形を調べました。一方、例えば物理で習う相対性理論は時空(すなわち4次元)を扱うため、そのような高次元の空間や図形を調べる際には、「長さ」や「角度」以外の測定方法もあったほうが便利です。現代数学では「位相不変量」という観測装置を用いてさまざまな図形を探究しますが、その発想の原点は、高校で学ぶ「多面体定理」や、毎朝の身支度の際に鏡に映る自分の姿が左右対称に見える現象と深く関わっていることが、いまでは明らかになっています。
さまざまな位相不変量
「多面体定理」に登場する(頂点数)−(辺の数)+(面の数)も位相不変量の一例であり、多面体の場合、その値は2になります。これは、すべての多面体が内側から膨らませると球面(=地球の表面)になるという共通の性質に基づく結果です。このように「位相不変量」は、空間や図形を連続的に変形しても一定の値を保つという性質をもち、20世紀にさまざまなものが発見されました。とくに、多くの興味深い位相不変量が「特性類」という形で得られることが知られており、その研究は現在でも活発に続けられています。
ホモトピーの考え方……幾何学の範疇を超えて
ポアンカレが創始した「ホモロジー論」を始まりとして、20世紀の数学の発展を経た現在では、「K理論」や「コボルディズム理論」など、多岐にわたる位相不変量が知られています。「安定ホモトピー論」と呼ばれる分野では、とりわけ図形や空間の基本的構成要素である「球面」の安定ホモトピー群に関心が持たれています。
さらに、ホモトピーの考え方は近年、より一般的な数学言語(圏論)へと昇華され、幾何学の枠組みを超えて、ほかの数学分野や理論物理の研究においても、その有用性がいっそう高まっています。
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