数学は「世界をどう認識すべきか」を教えてくれる
「外」がない世界の「形」を調べる
物の形を調べるとき、その物を外から眺めます。例えば、地球が丸いことは地球から離れてみてわかることでしょう。
では、地球の外側、つまり宇宙の形を調べたいときはどうしたらよいでしょうか? 宇宙はどこまでも広がっているのか? 古代の人々は地球の形についても同じ疑問をもっていたのではないでしょうか。では蟻になったつもりで地球が丸いということをどうやって調べたらよいでしょうか?
「曲率」を使えば、曲がり具合がわかる
地表の世界しか知らない蟻はその外(宇宙)の存在はわからないかもしれません。それでも形を測ることができます。矢印を持って、その方向が変わらないように動いてみましょう。次に矢印の方向が変わらないように矢印と垂直の方向(横)に進んでみましょう。最後に矢印とは逆の方向に進んでみましょう。すると初めの位置に戻ってきます。さらに矢印の方向が初めの方向とは異なっていることがわかります。これは初めの位置の近くが平らではないことを意味しています。これを量として表したものを「曲率」と呼びます。この方法に従えば、外側の世界がなくても世界の形を調べることができます。このような幾何学を「微分幾何学」と呼びます。
空間の形を記述し、新たな空間の概念を創造する
「幾何学」は空間を根源的に理解しようとします。その世界観は数学の世界だけのものではなくなってきています。例えば、曲がった空間の中での幾何学(非ユークリッド幾何学)は当初数学の中の仮想の話と思われていました。しかし時空は曲がっていると主張するアインシュタインの相対性理論は、微分幾何学の言葉を用いて記述されています。さらには複素数を用いた空間でアインシュタイン方程式を満たす空間が万物の理論の候補として考えられている超弦理論で注目を集めています。
今も幾何学は新しい空間概念を生み出そうとしています。それは受け入れられるのに時間がかかるものですが、100年後の人類の空間に対する直感を大きく変える発見になるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
福岡大学 理学部 応用数学科 教授 佐野 友二 先生
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