亡くなった人の最後のメッセージを見逃さない臨床検査技師の目

法医学分野でも活躍する臨床検査技師
臨床検査技師は、医師の指示のもと検査を通じて診断や治療に必要なデータを提供しますが、法医学分野でも活躍していることはあまり知られていません。法医解剖の現場で働く臨床検査技師は、ご遺体から得られた臓器・組織や血液・尿・髄液などの検体検査、遺伝子検査など、あらゆる検査業務を担当します。
腐敗した遺体から何が読み取れる?
臨床検査技師の仕事として、光学顕微鏡や電子顕微鏡で、組織や細胞小器官のようなミクロの世界を観察することもあれば、ご遺体の表面から見て取れる情報で分析することもあります。例えば、死後に現れる死体硬直や死斑などの変化を「死体現象」といいます。そして、死体硬直や死斑など死後数時間程度の早い段階で現れる変化を「早期死体現象」、死後数日たってみられる、いわゆる腐敗とよばれる変化を「晩期死体現象」といいます。
実は、晩期死体現象については「腐敗してしまっては詳しいことは何もわからない」という考え方が主流で、研究も多くは行われていません。しかし、晩期死体現象をつぶさに観察することで得られる情報は確かにあります。例えば神奈川県県北地域を対象にした研究では、季節や気候などの環境要因と、皮膚表面に現れた変色とその範囲、皮膚そのものの状態の変化などの死体現象との関係を詳しく調べて、死後経過時間の推定に役立つ指標が示されました。
各地の特性を手がかりに
ただ、気候や環境は地域によって異なるため、各地域での研究が必要です。
気候は変動を繰り返しており一定ではなく、一度指標を作成しても永続的に適用できるとは限りません。また、地域に特有の住居形態があったり、生息する動物や水棲生物、虫の種類や分布にも地域差があります。例えば、死体を蚕食するハエの幼虫の種類や成長速度の違いを比較することも有用な指標になります。より正確な死後経過時間のため、さまざまな地域特性から多角的にアプローチし分析することで、推定の精度向上に貢献できるでしょう。
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先生情報 / 大学情報

北里大学健康科学部 医療検査学科 教授竹内 法子 先生
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