裁判から生まれたリハビリテーション

裁判から生まれたリハビリテーション

ジャンヌ・ダルクの死がきっかけ

「リハビリテーション(Rehabilitation)」という言葉は、中世のヨーロッパで生まれたものです。そのきっかけとなった人物が、フランスの英雄として知られるジャンヌ・ダルクです。
彼女は「魔女である」と、1431年に火あぶりの刑に処せられました。しかしジャンヌ・ダルクの死後、彼女の罪の有無をめぐって、再び裁判が行われます。結果、1456年、ローマ教皇が「ジャンヌ・ダルクは無罪である」と判決を下しました。このときの裁判は「リハビリテーション裁判」と呼ばれ、初めてリハビリテーションという言葉が使われました。
リ(re)は「再び」、ハビリス(habilis)はラテン語の形容詞で「適した、ふさわしい」、ーション(-ation)は「~すること」という意味があります。ジャンヌ・ダルクの無実が証明されたことは、「再び適したものにする」「再びふさわしいものにする」ということで、そう命名されたのです。

もともとは傷病兵を社会復帰させる場

リハビリテーションという言葉が医学の世界に用いられるようになったのは1917年です。第一次世界大戦中、アメリカの陸軍病院に「身体再訓練(現在の機能訓練)およびリハビリテーション部門」が設けられました。身体に障がいはあるけれど、命のある傷病兵(しょうびょうへい)を社会復帰させ、最終的には職業復帰させようという目的で始まりました。
そして現在、リハビリテーションという言葉は「身体的・精神的な部分の能力を回復させる活動」という意味で用いられています。「病院でリハビリをする」など、短縮して呼ぶことが多いですね。
リハビリテーションの中には作業療法というものがあります。作業療法は「作業(活動)を通して、障がい者にリハビリをさせること」。これを仕事の一つにしている職業が作業療法士です。

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先生情報 / 大学情報

山形県立保健医療大学 保健医療学部 作業療法学科 教授 藤井 浩美 先生

山形県立保健医療大学 保健医療学部 作業療法学科 教授 藤井 浩美 先生

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メッセージ

作業療法士は「日常生活を科学する」ことが大切です。これは、自分たちの生活を科学的にとらえるということ。普段、カレーライスを食べるにしても「どう食べれば動作的に効率がいいか」「鎖骨を折って腕が上がらなかったらどう食べればいいか」などと考えることです。障がいのある人の生活分析の第一歩は自分の生活を分析することです。
私たちの仕事は運動・動作・行為の分析からはじまります。数学や物理、生物など理系の知識は、日常生活を分析するための基本です。卒業生は作業療法士の国家試験受験資格が得られ、就職率は非常にいいです。

山形県立保健医療大学に関心を持ったあなたは

山形県立保健医療大学では、臨床の現場で重要であるチーム医療という視点に立って、各学科が共通で学ぶことが出来るように配慮し、職種の異なった学生がお互いの職種の役割を理解し、保健・医療・福祉の現場で連携、協調していく基礎を培うこととしています。また、本学の教育目標の一つに国際的視野を持って活躍できる人材の育成を掲げており、山形県が姉妹県州となっているアメリカ・コロラド州・デンバーのコロラド大学、コロラド州立大学と学術交流協力促進に関する協定を結び、教員や学生の交流を毎年盛んに行っています。