世界にまだない、まったく新しい分子をクリエイトする化学

誰もつくったことのない新しい分子に向けて
これまでに多くの有機化合物がつくられ、新しい薬や素材となり、私たちの生活は便利になりました。しかし、まだまだ有機化学には無限の可能性があります。有機化合物は主に炭素と水素、これに窒素や酸素など周期表の一部の元素の組み合わさったものですが、もっと違う元素を入れるとどうなるでしょうか。例えば炭素のすぐ下の元素、ケイ素で有機化合物をつくったら? もっと下の元素では? 周期表に目を向ければ、わからないことがたくさんあります。さまざまな元素を含む新しい分子を合成できれば、これまでの有機化合物の常識を超える分子や性質を発見することができるかもしれません。まだ世界にない新しい分子は新しい材料や新触媒の開発につながります。
新しい分子への挑戦
代表的な有機分子として正六角形の分子、ベンゼンがあります。これをほかの元素でつくるとどうなるでしょうか。窒素など一部の元素を除くと、このように単純な分子でもほかの元素でつくることはとたんに難しくなります。それでもほかの元素でベンゼンをつくるとどうなるのか、この疑問にこたえるべく、挑戦が行われてきました。炭素と性質の異なる元素を入れれば、きっと新しい性質が出るはずです。例えば、アルミニウムではどうなるでしょうか。炭素は有機化合物の元素、アルミニウムは金属の材料のイメージがあります。これくらい違う元素でも化学の力を使えば、ベンゼン骨格に組み込むことができます。新しい分子は従来にはない構造や性質をもちます。このアルミニウムを含むベンゼンのケースでは、金属触媒の配位子として活用できる可能性が見えています。
可能性は無限大
もっと違う元素では? ベンゼン以外の分子では? まだまだたくさんの可能性があります。このように新しい分子をデザインして、実際に自分の手でつくることができるのが化学です。元素の組み合わせ、導入対象は無限にあります。新しい分子をデザインすることで、新しい性質をもつ物質が生まれる可能性は大いにあるのです。
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山陽小野田市立山口東京理科大学工学部 応用化学科 准教授鈴木 克規 先生
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有機元素化学、有機材料化学先生が目指すSDGs
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