講義No.14246 数学

世界を記述する新しい関数を見つけ出す!

世界を記述する新しい関数を見つけ出す!

現象を記述する関数を求める

数学が扱うものは大きく分けて「図形」「数」「関数(式)」の3つです。そのうちの関数の領域では、これまで多くの関数が物理現象を記述するものとして見つけられてきました。波の動きや形を表す関数や、人工衛星を飛ばすための関数、半導体の中の電子の動きを知る関数などさまざまなものがあります。
現在でも、新しい知識や技術が関数を必要としています。例えばAIが答えを導き出す仕組みはいまのところブラックボックスでわかりません。また、人間のドライバーは赤信号で無意識にブレーキペダルを操作して、ゆっくり減速することで安全に車を停止させることができますが、この動きを自動運転でコンピュータが制御するために関数が使えると便利です。さらに、プロの陶芸家やダンサーの動きなどを数式化してシミュレーションできれば、人間の持つ技術の継承にも役立ちます。

数学的現象を記述する関数

関数で表される現象は自然現象に限りません。「数学の現象」を表す関数についての研究も行われています。例えば「ある点で曲線のグラフがx軸と交わる」といったグラフや曲面の形やふるまいも数学的現象です。欲しい性質を持つグラフを実現しつつ、対称性などいろいろな制約をつけたきれいな関数を新しく作り出す問題に取り組まれています。関数を作るには、微分方程式や数列といった「関数を作るツール」を使います。

難しい問題はわかりやすいものに置き換える

関数の研究では、知りたい関数だけを対象にするのではなく、ほかにもいくつか関数を集めて関係性などを調べます。例えば高校数学で習う三角関数「sin、cos」の加法定理は関係性の好例です。また、抽象度の高い問題にそのまま取り組むのは難しいため、本質を損なわないように、よりわかりやすい概念に置き換えて考えます。図形の対称性を使えば方程式が簡単に解けるように、複雑な関数を図形的に考えて対称性を利用するのは有効な方法の一つです。ガロアを創始者とする優れたアイディアです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

九州大学 理学部 数学科 教授 落合 啓之 先生

九州大学 理学部 数学科 教授 落合 啓之 先生

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代数解析学

メッセージ

学生のあいだはどんどん失敗してみましょう。社会人になってからの失敗は大問題につながることがありますが、学生のうちの失敗は大したことはありません。勉強や部活での失敗でもいいし、旅行先での失敗だとか電車を乗り過ごしただとか、徹夜して寝坊したとか、何でも構いません。生活面での失敗は、自分の特性や持ち味を知るきっかけにもなります。数学に関しても、たくさんトライしてたくさん失敗することが重要な資質です。公式は覚えるのではなく作る。研究生活に入ってからもどんどんトライして失敗してください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

九州大学に関心を持ったあなたは

九州大学は、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えていきます。さらに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。