ブラックホールが教えてくれる宇宙の未来
ブラックホールからは誰も抜け出せない
ブラックホールなんて聞くとまるでSFの世界、そう連想する人がいるかもしれません。しかし、ブラックホールは観測によって実際に存在が確かめられているものであり、簡単に言えば重力が強く、光さえも抜け出すことの出来ない空間のことです。
地球からはロケットで、脱出速度v=約11.2km/s 以上を出せば、重力に打ち勝って宇宙に飛び出すことができます。脱出速度はその星の直径が小さいほど、質量が大きいほど大きくなりますが、このブラックホールの場合は、脱出速度が光速c=3×10⁵km/s(=30万km毎秒)をも超えてしまうために一度突入すると、いかなるモノも脱出不可能となってしまいます。
というと、何か特異で不気味な感じがしますが、ブラックホールは珍しいものではなく、銀河の中心には太陽質量の10⁶~10⁹倍もある巨大なブラックホールがあります。銀河の中心は物質も多いため、ガスを集めては質量が大きくなり、それにともなって重力も増すという連鎖を繰り返してブラックホールが出来上がっていくのです。
未来の宇宙はブラックホールだらけ
また、恒星がその一生を終えるときの超新星爆発によってもブラックホールができることがあります。軽い恒星の場合は中性子星として残る場合もありますが、重い恒星の場合は重力を支えきれなくなり、ブラックホールと化すのです。
超新星爆発によってできるのはブラックホールばかりではありません。大きなエネルギーによって核融合が起こるため、数多くの元素がつくられます。ここで誕生した元素はそのまま宇宙の構成物質となるので、私たちの体を構成する元素ももとをたどれば超新星爆発のおかげ。この小さな体の中には宇宙が存在するとも言えるでしょう。
こうして超新星爆発を繰り返すたびにブラックホールができていくとなれば、未来の宇宙はブラックホールだらけになると予測されます。しかし、長期スパンではブラックホールは蒸発するとの考えもあり、未来の宇宙、引いては宇宙の最後がどうなるかは、いまだ謎に包まれたままなのです。
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先生情報 / 大学情報
東京科学大学 理工学系(旧・東京工業大学) 理学院 地球惑星科学系 教授 中本 泰史 先生
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