宙に浮いて回転する「ベアリングレスモーター」で広がる可能性

宙に浮いて回転する「ベアリングレスモーター」で広がる可能性

家の中はモーターであふれている!

冷蔵庫にエアコン、掃除機と、身近な家電製品のほとんどにモーターが使われています。自動車となると、ワイパーやステアリング、サイドミラーの開閉など、数十個ものモーターが使われています。多くの人が気に留めていないだけで、一般的な家庭の中には100個以上のモーターがあり、実は全電気使用量の約55%もが、モーターに使われているのです。そのため、例えば自動車業界では高速走行をする高速道路と、停止と発進を繰り返す市街地の両方で効率の良い運転ができるモーターの開発を行うことに、各自動車メーカーがしのぎを削っています。

壊れにくいモーターの開発

どのモーターも基本的には外側にある固定子とその内側で回転する回転子、2つの磁石から構成されています。そして磁石同士がくっつかないように、ベアリングという軸受が支えています。このベアリングが最も消耗しやすく、壊れやすい部分なのですが、食品工場や宇宙ステーション、原子炉内で使われているモーターとなると、簡単にメンテナンスや交換ができません。そういった特殊な状況でも使えるように、ベアリングのないモーターの開発が進められています。簡単に言うと、リニアモーターカーのようなもので、固定子に巻いた銅線の巻き方や電流を工夫することで、回転子を浮かせた状態を作るわけです。このような技術を、磁気浮上技術といいます。

磁気浮上技術活用への高まる期待

実はベアリングレスモーターの研究は1990年代から行われていて、スイスでは既に半導体を作る工場内で化学薬品を運ぶポンプに使われています。最初の開発コストこそかかりますが、長寿命であることからランニングコスト(維持管理費)は既存のモーターより低く抑えられます。ベアリングレスモーターに使われるような磁気浮上技術は、あまり知られていないだけで、実は鋼板の搬送装置や風洞の実験装置など意外なところで使われています。2027年のリニアモーターカー開業が追い風となり、今後の発展が見込まれる分野といえるでしょう。

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公立諏訪東京理科大学 工学部 機械電気工学科 教授 大島 政英 先生

公立諏訪東京理科大学 工学部 機械電気工学科 教授 大島 政英 先生

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電気機器工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

自分が「頭の中で考えたものが形になる」、これがものづくりの醍醐味です。
モーターの場合、理論を考えた上で設計し、シミュレーションで試した後に実機を作るので、形になるまでとても時間がかかります。その分、目の前で理論通り動いたときの喜びも大きいのです。今は非常に小さなモーターもありますが、その中には電気電子回路や機械工学、プログラムに制御回路と、さまざまな分野のノウハウが詰まっています。幅広い知識を身につけられるというのも、電気機械工学分野の面白いところです。

先生への質問

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  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

公立諏訪東京理科大学に関心を持ったあなたは

公立諏訪東京理科大学は、地域に貢献すると共に世界にも羽ばたく人材を育てることを目標として、2018年4月にスタートしました。日本有数のものづくり産業の集積地である諏訪地域の特長を生かした機械電気工学科と、今後のものづくりの環境を大きく変化させるAI、IoTなどの情報通信技術の力を発揮する情報応用工学科の2学科を置き、「ものづくりと情報通信技術の融合」を目指した教育と研究を推進します。さらに、「工学と経営学の融合教育」で、工学に加えてマネジメントを学ぶことにより、総合的な力や判断力を身につけます。