部品形状の誤差をどこまで許す? 仮想形状で機械設計の未来を変える

理想と現実とのギャップ
機器の性能や寿命は、部品の仕上がり具合に大きく左右されます。たとえば、回転する円筒部品は、滑らかで真円に近い形が理想ですが、実際には加工誤差は避けられません。誤差をまったく許容しないと、多くの部品が不良品となり、経済的損失が生じます。そこで機械設計では、形状や位置、傾きなどに対して、どこまでズレを許せるかをあらかじめ定めます。これを「幾何公差」と呼び、「±0.01 mm」のように図面で指定します。幾何公差を適切に設定することで、製品全体の品質のばらつきを抑え、不良品の発生を防ぐことができます。
適切な公差を決める「品質を予測する技術」
幾何公差は、機械としての機能を満たすために設計者が決めますが、現状では勘や経験に頼る部分が多く、負担が大きいのが実情です。公差の種類や数値が品質にどう影響するか、どの機械が適しているかを自動で計算し、設計を支援する仕組みが求められています。そこで、ランダムな公差をもつ仮想部品をコンピュータ上で大量に生成・組立シミュレーションし、ばらつきを予測する手法の研究が進んでいます。現在は単純形状の部品を対象に予測が可能で、今後は複雑な形状や他の品質評価にも対応させ、より実用的な技術へと発展する予定です。
製造工程で常に一定の品質を保つために
部品の品質は、使用する製造設備にも左右されます。中には、加工のたびに特有の表面の跡が出る機械もあります。そこで、部品メーカーの設備に合わせて幾何公差を設定すれば、より正確な品質管理が可能です。研究では、工作機械ごとの加工痕や形状の特徴をコンピュータ上で仮想的に再現し、それらを多数生成した際の平均やばらつき(分散)も制御できるようにしています。ばらつきを抑えることは製造業の重要な課題であり、コストをかけずに予測・設計に反映できるこの技術は、設計手法やモノづくりの未来を変える可能性をもっています。
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山陽小野田市立山口東京理科大学工学部 機械工学科 准教授大塚 章正 先生
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