熱帯雨林の不思議な話
熱帯雨林に花開く!
熱帯雨林というと、ジャングルやアマゾン・じめじめ・暑い・雨・鮮やかな色の花などのイメージがあるかと思います。東南アジアの熱帯雨林は、海に囲まれた群島に位置する場合が多いので、中南米より雨が降りやすく、熱帯雨林の中でも季節性に乏しいのが特徴です。マレーシアのボルネオ島の熱帯雨林では、毎年全体5~6%しか花が咲きません。足を踏み入れても、99%花に出会うことはないのです。しかし、5~6年に一度、“一斉開花”と言って、60~70%の花が地上60メートルの高さに見事に咲く年があります。なぜこのような現象が起きるのかを研究していくと、降水量に関係があることがわかってきました。ボルネオ島の月平均降水量は100mmを超えますが、一日単位で細かく降水量を計測すると、数年間に一度だけ約30日間の降水量が40mmに満たない、弱い乾燥をもたらす時期があることがわかりました。10年単位の平均をとった、月別の気温・降水量のグラフ上には表れないことが現実には起こっていたのです。
雨も過ぎれば妨げに
植物が花を咲かせる理由は、自分の花粉を同じ種類のほかの植物に運んだり、ほかからもらったりして、実や種を作る必要があるからです。それ一つだけで咲いていても意味がなく、いくつもの花が同時期に咲いていないと花粉のやりとりができません。つまり、同種の植物が滅ぶかもしれないのです。熱帯雨林の木は、“一斉開花”することで、その危機をみずから乗りきるための知恵を持っていました。その合図が「雨の少ない時期をねらえ!」だったのです。“一斉開花”が起こると、木の実を目当てにイノシシの数が激増してしまいます。しかし、増えたイノシシは人間の狩りの対象になり、生態系の秩序が保たれるのです。今では、ターゲットとなる木を大きな傘のようなもので覆い、その木の根があまり水を吸わない時期を人工的に作り“一斉開花”のメカニズムを解き明かす研究が行われています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
東北大学 大学院生命科学研究科 教授 中静 透 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
植物生態学先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?