能動スコープカメラで災害救助
がれきのすき間を縫って、自立的に進入
現在、研究開発が進んでいる「能動スコープカメラ」は、災害現場への適用が最も期待されている、ヘビ型のレスキューロボットのひとつです。建物が崩壊したがれき内での捜索や情報収集を目的としています。
ケーブルの先端にカメラが付いたビデオスコープの表面に繊毛振動駆動と呼ばれる駆動機構が付けられており、狭いがれきの空隙を縫って内部に進入していくことができます。また、ケーブルをねじったり、頭部を動かしたりすることによって進行方向を操縦することができ、3 cm程度のすき間があれば、深さ8 mの奥まで、内部を撮影することができます。これができるのは、世界中で能動スコープカメラだけです。
建設現場崩落事故の原因調査に活躍
2007年12月に、米国Jacksonville(フロリダ州)で建設現場の崩落事故が発生しました。その事故原因調査のために、能動スコープカメラに出動要請がありました。ほかの手段では倒壊がれきの内部の様子を調べることができなかったためです。2008年1月の調査で、「柱に入った亀裂の方向や長さ」、「コンクリート剥離片の断面の状態」といった災害が起きた原因の証拠となる映像を、がれき奥深く7 mまで進入して撮影することに成功したのです。
そこには、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)の都市災害救助の専門家も同行していましたが、これは人命救助への有効性を明らかに示したものだ、と高い評価を受けました。
その後、2009年3月にドイツで発生したケルン公文書館崩落事故の救助活動に出動しましたが、現場があまりにも危険であったため、実際に適用することはできませんでした。
レスキューロボットの歴史は浅く、ロボットのおかげで人が生存救出されたという事例はまだありません。しかしながら、科学技術は日進月歩で発展しており、近い将来、ロボットが救助に不可欠の「道具」として活用されようになることは間違いありません。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 大学院情報科学研究科 教授 田所 諭 先生
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