求む! 有能なガードマン~植物とアリの不思議な共生関係~
アリのコミュニケーションの方法は
「女王アリ」「働きアリ」のように、アリはそれぞれの役割を持ち、集団をつくって生活する社会性昆虫であることはよく知られています。彼らはなぜ同じ巣の仲間を識別できたり、一定のルールに従って行動できたりするのでしょうか? これにはアリの体表にあるワックスのような化学物質が関係しています。化学物質の組成がアリの種によって異なるため、同じ巣の仲間を識別できるのです。つまり、アリ自らが作り出す化学物質がコミュニケーションツールの役割を果たしているのです。
互いがいなければ生きていけない
アリは外敵に対してさまざまな防衛手段を進化させてきました。熱帯雨林にはその防衛力を利用して、アリをまるで住み込みのガードマンのように雇っている「アリ植物」がいます。例えば「オオバギ」という広葉樹は、茎に空間をつくってアリを棲まわせます。葉を食べる虫から身を守るためにアリに警備してもらい、その代償として葉から蜜を出してアリに与えているのです。この結びつきが非常に強くなり、お互いがいなければ生きていけないオオバギの仲間とアリもいます。
どうして相手がわかるの?
オオバギにもいろいろな種がありますが、興味深いのは、オオバギ属とアリの種ならなんでも共生関係が成り立つのではなく、特定のペアが決まっていることです。オオバギとアリの共生関係は、女王アリが棲むオオバギに定着して共生関係が始まりますが、どのようにして女王アリは特定のオオバギを探し当てるのでしょうか? アリ同士が体表のワックスで仲間だという情報を交換するように、何らかの固有の化学物質がオオバギから出て、アリがそれを情報として受け取るとも考えられますが、詳しいメカニズムはまだわかっていません。このように生物が自ら作り、別の生物の行動や生理に影響をもたらす化学物質を「セミオケミカル」と呼びます。セミオケミカルはそこに込められた情報を読み取って行動するための、いわば自然のバーコードなのです。
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大阪教育大学 教育学部 教育協働学科 理数情報部門 准教授 乾 陽子 先生
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