生物由来の材料で、地球にやさしい環境浄化法を考えよう

生物由来の材料で、地球にやさしい環境浄化法を考えよう

多種多様なアイデアを武器に環境を浄化

人間は、地球上でさまざまな形で自然に影響を与えながら暮らしています。時には、それが環境を汚染するような形で現れてしまう場合もあります。人間が汚染してしまった環境をできるだけ元に近い形にまで回復させるための「環境浄化法」の研究では、現在、世界各地で多種多様なアイデアによる取り組みが行われています。

カイコの繭を油の吸収剤に応用

カイコの繭(まゆ)は、天然の動物繊維である絹を取リ出すもとになるものです。この繭には強力に水を弾(はじ)く「はっ水性」があることがわかっています。そのはっ水性ゆえに、逆に油に対しては強い「親油性」を持っているため、この特性を廃油の吸収剤として活用できないかというアイデアが生まれました。
まず、絹の精製過程で生じる、「くず繭」などと呼ばれる、製品として利用できない汚れた繭を回収し、粉砕して表面積の大きい綿状にしたものを用意します。そのくず繭のかたまりは、油の混じった水に浸すと、油の成分を強力に吸収するのです。もともと利用価値のなかったくず繭を有効活用できることや、環境にあまり負担をかけないですむ生物由来の資源を使うことができるという点で、環境浄化法のユニークな事例の一つと言えるでしょう。

シンプルで低コストな浄化法をめざして

環境浄化法に関する研究では、このように生物の作る材料を利用するなどして、環境にかかる負荷をできるだけ少なくすることが大切です。また、世界のさまざまな国や地域で応用できる手法を確立するには、複雑な処理過程や高価な機材を必要とするやり方ではなく、できるだけシンプルな技術で、なおかつ、低コストでできる手法であることが望ましいでしょう。
地球の環境をいかにして守り、将来にわたって維持していくかという課題は、これからの時代に私たちが決して避けて通ることのできない関門の一つなのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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信州大学 繊維学部 応用生物科学科 教授 森脇 洋 先生

信州大学 繊維学部 応用生物科学科 教授 森脇 洋 先生

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応用生物科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

研究というものは、冒険に似たところがあります。自然の謎に向かって、道なき道を必死になって進んでいきます。その意味では、ロールプレイングゲームのような側面があるかもしれません。冒険には危険が付きものです。方向を見失って迷子になることもあります。そうした危険を避けるために、高校や大学では基礎的な勉強が必要です。
その上で研究という冒険に挑んでいってください。環境の研究者の一人として、あなたにも環境について興味を持ってもらえたらうれしいです。

先生への質問

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信州大学に関心を持ったあなたは

信州大学は、人文・教育・経法・理学・医学・工学・農学・繊維の8学部からなり、すべての学部に大学院が設置されています。教員は約1千人、在学生数は約1万1千人で、世界各国からの留学生約400人も意欲的に学んでいます。
松本、長野、上田、伊那に位置するいずれのキャンパスも、美しい山々に囲まれ、恵まれた自然のもと、勉学にも、人間形成の場としても、またスポーツを楽しむにも最適の環境にあります。さらに、地域との連携がきわめて良好であり、地域に根ざした大学としての特色も発揮しています。