生物由来の材料で、地球にやさしい環境浄化法を考えよう
多種多様なアイデアを武器に環境を浄化
人間は、地球上でさまざまな形で自然に影響を与えながら暮らしています。時には、それが環境を汚染するような形で現れてしまう場合もあります。人間が汚染してしまった環境をできるだけ元に近い形にまで回復させるための「環境浄化法」の研究では、現在、世界各地で多種多様なアイデアによる取り組みが行われています。
カイコの繭を油の吸収剤に応用
カイコの繭(まゆ)は、天然の動物繊維である絹を取リ出すもとになるものです。この繭には強力に水を弾(はじ)く「はっ水性」があることがわかっています。そのはっ水性ゆえに、逆に油に対しては強い「親油性」を持っているため、この特性を廃油の吸収剤として活用できないかというアイデアが生まれました。
まず、絹の精製過程で生じる、「くず繭」などと呼ばれる、製品として利用できない汚れた繭を回収し、粉砕して表面積の大きい綿状にしたものを用意します。そのくず繭のかたまりは、油の混じった水に浸すと、油の成分を強力に吸収するのです。もともと利用価値のなかったくず繭を有効活用できることや、環境にあまり負担をかけないですむ生物由来の資源を使うことができるという点で、環境浄化法のユニークな事例の一つと言えるでしょう。
シンプルで低コストな浄化法をめざして
環境浄化法に関する研究では、このように生物の作る材料を利用するなどして、環境にかかる負荷をできるだけ少なくすることが大切です。また、世界のさまざまな国や地域で応用できる手法を確立するには、複雑な処理過程や高価な機材を必要とするやり方ではなく、できるだけシンプルな技術で、なおかつ、低コストでできる手法であることが望ましいでしょう。
地球の環境をいかにして守り、将来にわたって維持していくかという課題は、これからの時代に私たちが決して避けて通ることのできない関門の一つなのです。
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先生情報 / 大学情報
信州大学 繊維学部 応用生物科学科 教授 森脇 洋 先生
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