高度情報通信社会に必須! 磁石を用いた電磁波吸収体

高度情報通信社会に必須! 磁石を用いた電磁波吸収体

日常生活を脅かすこともある「電磁干渉」

病院やバスの中で、「携帯電話の電源はお切りください」という注意書きを見かけることがあります。これは、携帯電話から出る電磁波が、ペースメーカーなどの医療機器の誤作動を招く恐れがあるからです。パソコンのそばにあるラジオから出るガーガーという雑音も、電磁波による障害の一つです。携帯電話やETC、レーダーなど、電子通信機器の増加にともない、この「電磁干渉」が社会的な問題となってきました。

「電磁波シールド材」と「電磁波吸収体」

以前、家庭内で電磁波を出す機器と言えばテレビやラジオ程度でしたが、パソコンや電子レンジなどの普及とともに一般家庭でも電磁干渉が増えています。例えば、電子レンジから出る電磁波の波長がパソコンの集積回路の回路長と近いため、電磁波の電界変化がパソコンの信号にぴたりと乗ってしまうことがあり、これによって誤作動が起きることがあります。このような電磁干渉を防ぐのに有効なのが、「電磁波シールド材」や「電磁波吸収体」です。
「電磁波シールド材」は金属のため、外からの電磁波により電子が動き、これによって反射波が出て内部への影響を防ぐものです。一方、「電磁波吸収体」は、入ってきた電磁波を熱に換え、反射波も透過波もなくすものです。パソコンなどの場合では、電磁波発生源が本体内部にもあるので、シールド材だと内部から出た電磁波がどこかに反射してほかの部分に影響を起こしますが、吸収体ではこのような影響がないので、主に用いられています。

吸収体の素材として注目される磁石

これまでの吸収体では、材料として磁性材料を用いる場合、スピネルフェライトなどが使われてきましたが、対応できる周波数には限界があるため、最近の高周波域では対応できなくなってきました。電磁波を吸収する周波数は、材料中の原子磁石を一方向に配列させる力に比例するので、この力が強い磁石は吸収体材料として有望です。そのため、フェライト磁石や希土類磁石を用いた新しい電磁波吸収体の開発が進められています。

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東北大学 工学部 材料科学総合学科 知能デバイス材料学コース 教授 杉本 諭 先生

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メッセージ

新しい材料を開発することは、簡単なことではありません。基礎をしっかりと学び、その知識と経験を生かして粘り強く研究し続けることが必要です。しかし、一つの新材料の発見が、世界平和や産業界の大きな改革に結びつき、社会を大きく変える可能性もあります。したがって材料研究は、自分を高め、世の中にも貢献できるやりがいのある仕事です。自分の中で限界を設定せず、より上をめざしてがんばりましょう。また、材料学は、グローバルな研究分野です。高校生のうちから英語もしっかり勉強しておくと、あとあと役に立つと思いますよ。

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