リモートセンシングで地球環境の未来を予測する

リモートセンシングで地球環境の未来を予測する

世界の森林は減っているの?

森林破壊や気候変動による砂漠化で、地球の植物は減り続けているイメージがあるかもしれません。人工衛星の画像でも、アマゾンの熱帯雨林が伐採で減っている様子は一目瞭然です。しかし世界全体で見たとき、植物は本当に減少しているのでしょうか。調査のために世界中を歩きコツコツとデータを集めるのは、現実的ではありません。そこで使用するのが、現地に行かなくても広範囲を観測できる「リモートセンシング」という技術です。これを使えば、人工衛星や飛行機にセンサを搭載し、電磁波を使ってさまざまなデータを得ることができます。

リモートセンシングで植物の量を調査

植物の量を調べるには、光の吸収量と反射量を観測します。緑の葉は赤や青の可視光の波長をよく吸収し、反対に赤外線は強く反射するのです。この特性は、地球の表面に広くある物質では植物だけのものなので、これらのデータを比べれば、植物の生育範囲や量を知ることができるのです。調査の結果、1990年代は植物の量が増えていたことがわかりました。地球温暖化が進むと、シベリアなど寒さの厳しい地域では春が早く訪れ、冬の到来が遅くなります。つまり地面が雪や氷で覆われる期間が短くなるため、植物の生育時間が長くなる、すなわち植物の量が増えるのです。

森林がCO₂排出源に変わる!?

人間が化石燃料を大量消費し、CO₂を排出することが地球温暖化の一因とも言われます。植物の量が増えるとCO₂吸収量もアップして地球温暖化が食い止められると思うかもしれませんが、実はそう単純ではありません。今後しばらくは、温暖化により寒冷地域の植物量が増えるので、CO₂吸収量もアップすると考えられます。ところが植物も呼吸をしますし、落ち葉を微生物が分解するときにCO₂を排出するため、森林全体としてはある程度まで育つとCO₂吸収量と排出量の差がなくなっていきます。観測データを解析すると、将来、森林はCO₂の吸収源から排出源に変化するという予測もあるのです。

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先生情報 / 大学情報

名古屋大学 理学部 地球惑星科学科 教授 山口 靖 先生

名古屋大学 理学部 地球惑星科学科 教授 山口 靖 先生

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地球惑星科学

メッセージ

私は、「リモートセンシング」を観測ツールとして地球や月の研究を行っています。リモートセンシングの利点は、遠く離れた場所のデータを入手できることです。研究室に居ながらにして、地球環境の調査や地下資源探査、さらには宇宙惑星探査など、いろいろなことが可能なのです。宇宙へはそう簡単には行けませんが、現場のデータを自分の目で確かめる楽しさや、データの取り方、解析方法を工夫する面白さもあります。興味があるあなたには、幅広いことがらに好奇心を持って取り組んでほしいと思います。

名古屋大学に関心を持ったあなたは

名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。