木を植えることは環境にいい?
ちょっと待った!その木を植える前に!!
樹木は、木材を生産し、地球温暖化を防止したり水を安定供給したりするためにはなくてはならないものです。しかし、樹木を植えることが、常によいこととは限りません。
現在、二酸化炭素を吸収して地球の温暖化を緩和するために樹木がたくさん植えられようとしています。成長速度の速い樹木を植えることは、より二酸化炭素の吸収量を高めることになるため、成長の早い樹木だけを大面積に植えようとする動きがあります。しかし、このような単純な森林は、本来生育している多様な樹木や、それらと共生している生物の生息地を奪ってゆき、生物多様性を減少させることにもなります。
また、一種類の樹木だけを大面積に植えると、それらに特有の病気が広がったり、特定の動物が大発生したりすることで、樹木だけでなく周辺の生態系にも有害な影響を与えるリスクが高まると考えられています。
日本では木を植える活動が盛んに行われています。しかし、せっかくの植樹が上手く生かされていないことも多いのです。どの場所に、どのような樹木を植えるのか、さらにほかの生物との関係を考えた植え方をよく考える必要があるのです。
樹木の適材適所
日本のかつての林の中には多くの種類の樹木が生えていました。樹木を植える場合にも、いろいろな種類の樹木を植えることができれば、たとえその土地に適さない樹木があったとしても、そのうちの何種類かの樹木は健全に育つことができます。また、たとえ気候条件が変化したとしても、それに適した樹木が育つ可能性が高いでしょう。樹木には、その種特有の共生関係や適した環境があるのです。それぞれの樹木が生育するのに適した環境をよく考え、人間が生態系から恩恵を受けているシステムを壊さないような環境活動が重要なのです。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 大学院生命科学研究科 教授 中静 透 先生
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