赤ちゃんのもつ力を科学的に解明する「赤ちゃん学」
赤ちゃんの心の発達を科学的に検証
人は誰でも、「赤ちゃん」時代を経て成長していきます。生まれてすぐには体を起こすことも話すこともできなかったのが、1、2年の間に立ち上がってひとり歩きし、言葉も話すようになります。人生の中で、これほど急成長する時期はほかにありません。この時期に、赤ちゃんの心と脳がどのように発達していくのか、脳科学、発達認知科学、神経科学などの観点から検証するのが、「赤ちゃん学」という研究分野です。
赤ちゃんのもつ不思議な力
赤ちゃん学が盛んになったのは、ここ20~30年のことです。50年ほど前までは、赤ちゃんは能力的には何もできず、「白紙」の状態で生まれてくるという考えが一般的でした。ところが近年の研究から、生まれたばかりの赤ちゃんはさまざまな能力をもっていることがわかってきました。その一つが「顔の認知」です。例えば、生後間もない赤ちゃんの目の前で、口をあけたり、舌を出したりして見せると、赤ちゃんもまねをするという実験結果があります。これはよく考えると不思議なことです。顔まねをするには、相手が顔のどの部分をどう動かしているか理解し、自分の顔の同じ部分を、同じように動かす必要があります。赤ちゃんは、鏡などを見て自分の顔の動きを確認したわけでもないのに、自然とそれができるのです。さらに別の実験では、人の顔の絵を赤ちゃんの目の前でゆっくり動かすと、赤ちゃんはその顔をじっと目で追いますが、同じ顔の絵でも、目・鼻・口などの配置を変えてしまうと、顔だと認知せず、目で追わなくなるという結果も出ています。
なぜ顔まねができるのか?
赤ちゃんは、自力では生きていけません。自分を養育してくれる人の顔を認知することは、生きていく上で非常に重要です。顔まねをするのも、その人の気を引いて自分の世話をしてもらいたいからだとも考えられます。赤ちゃんには、こうした「生き延びるための戦略」が、生まれながらに備わっているのです。
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