常識を覆せ! 有機物と無機物の融合で材料を開発する新発想
有機と無機を組み合わせてポリマーを作る
金属やセラミックなどの「無機」材料と「有機」高分子は異なる分野として取り扱われていましたが、最先端の化学では、これらを融合した材料「有機・無機ハイブリッド」の開発が盛んに行われています。
高分子(ポリマー)の多くは、主に炭素と水素と窒素と酸素からできている、いわゆる有機物です。無機材料と同様に、周期表にあるさまざまな元素を有機高分子の中に組み入れることで、有機材料と無機材料の垣根を超えた「元素ブロックポリマー」が研究されています。今までに使われていない元素を組み入れることで、太陽電池や発光素子などにおいて高い機能を示す高分子が続々と開発されています。
「ゴムのように柔らかい」セラミックを作る!
セラミックのような無機物は、耐熱性など有機高分子をはるかにしのぐ特性を示しますが、金属やセラミックには、高分子ポリマーであるゴムやゲルにあるような「柔らかい」という性質はありません。しかし、セラミックのような無機物でもナノブロックにしてつなげることで、ポリマーのような鎖状の構造にしてやると、無機物でありながらゴムのような柔らかい性質を持つ材料を作り出すことができます。こうした無機材料と有機材料をナノスケールで融合することによって、全く今までにない材料が生み出され始めています。
これまでの材料開発の常識を再構築する
有機・無機ハイブリッドをデザインする際に重要なことは、階層的に考えるということです。どういう原子や分子から成り立っているかという「原子レベル」から、「ポリマー」としてどんな形になっているか、さらに固体材料の中でそれがどう存在するのかという、より大きなスケールまで、それぞれの異なったスケール毎に、構造があり特性につながっています。有機物や無機物という区別や物理や化学の垣根も、理解しやすいように人間が区分しているだけで、実はつながっています。新しい材料の研究は、これまでの化学や科学の常識を再構築する契機にもなっているのです。
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