傷ついても自ら修復するセラミックス材料の開発

セラミックスの性質
セラミックスは、硬くて耐熱性や耐食性(腐りにくい性質)に優れた材料です。一方で、1カ所の小さな傷から簡単に割れてしまうという性質も持っています。そのため、部品の使用中に表面の摩耗による傷が全体の破損につながる懸念があります。さらに、セラミックスは高価な材料であるため、破損による交換の頻度が高ければ、部品材料としての採用は難しくなります。
高温下で自己治癒するセラミックス
もし傷がついたとしても、材料自らが修復してくれれば好都合です。そんな「自己治癒セラミックス」とは、傷ついた場合、熱処理をすることで修復され、全体の強度に影響をおよぼさないという材料です。セラミックスの中に、酸化しやすい物質を混ぜ込んでおきます。混ぜ込んだものは、常温では酸化しません。傷がついた時に高温で熱すると、混ぜ込んだ物質が酸化物に変化して傷を埋め、全体の強度を保つのです。ヒトの体中にある血小板がかさぶたになって傷をふさぐようなイメージです。
酸化アルミニウムというセラミックスに金属のニッケルを混ぜ込んだ自己治癒セラミックスの研究が行われています。1200℃の高温で1時間ほど熱することで傷が修復され、再度同じ部分に傷が入っても4~5回は修復が可能です。実用化に向けて、修復できる温度を家庭のオーブントースターで出せる程度の100~200℃にまで下げることをめざして研究が進められています。
サーキュラーエコノミー(循環型経済)に貢献
自己治癒セラミックスが実用化され、機械部品などに取り入れられれば、完全に壊れる前に部品を熱処理して使い続けることができます。これからの時代は作ったものを長く使うことが大切になりますが、自己治癒セラミックスなら熱するだけなので、メンテナンスや交換の手間や経費も軽減されます。セラミックスのほかにもコンクリートなどでも自己治癒材料が研究されており、このような寿命の長い材料を生み出すことは、「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」への貢献につながります。
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