折れない骨や枝を作るには? 力と変形の関係を考える
折れない骨を作るには?
人間は年を取るにつれ骨が脆くなり、少し転んだだけでも骨折しやすくなります。どうすれば折れない骨を作ることができるのでしょうか? 骨はアパタイトという硬い結晶成分と、柔軟性のあるコラーゲンでできています。アパタイトを取り除き、コラーゲンを残して適度に骨を柔らかくすれば、理論上は折れない構造にすることが可能です。実際に鶏の骨に化学的な処理をしてアパタイトを減らすと、衝撃を与えてもぐにゃりと曲がり、骨折はしません。しかし骨全体を柔らかくしてしまうと体重を支えることができません。そこで、壊れやすい脆い部分やき裂の入った部分だけを柔らかくすることで骨折を防ぐ研究が進められています。
枝の分析で農業にも貢献
折れやすいのは人の骨だけではありません。青森県はりんごが有名ですが、雪によって果樹の枝が折れてしまうことも多いのです。あらかじめ枝に作用する力と変形量を予想できれば、枝折れによる被害を防ぐことができます。機械工学の中の材料力学の手法で枝の変形量を推定すると、どこに最大負荷がかかるかわかります。もし、折れてしまうような大きな力がかかっても、被害が枝先だけにとどまれば、果樹自体へのダメージを減らすことができます。適切な枝の形成方法や保護方法を発見すれば農業に貢献できます。
変形が大きなものを扱うのは難しい
通常の機械工学では、金属のように変形量の小さな硬い材料を扱います。金属でできた構造体では作用している力の大きさと作用位置がわかっていれば各部の変形負荷をある程度正確に予測できます。しかし、生体や枝は力が加わると大きく変形するため、従来の計算方法をそのまま使うことはできません。全体がどのように変形するかわからないと、力の作用形態が決定できず、変形の計算ができないといった複雑な議論になります。そこで、変形による力のかかり具合の変化を予測し、整合性がとれる条件を探索する手法が提案されました。この方法により、枝のような柔軟な構造物でも変形負荷の予測が可能になりました。
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弘前大学 理工学部 機械科学科 准教授 藤﨑 和弘 先生
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