温暖化で変わってきた「雪害」を、どう予防する?
雪が引き起こす災害とは
冬になると、日本では日本海側や北日本を中心に各地で雪が降ります。雪は山に降り積もることで貴重な水資源となるほか、観光資源やウィンタースポーツの開催にもつながるなど良い側面がありますが、一方で吹雪や大雪、着氷などによって生活の脅威にもなる存在です。最近では、地球温暖化の影響により、北海道などの北国でも真冬に雨やぬれた雪が降ることも増えてきました。寒い地域でぬれた雪や雨が降ってしまうと、着氷による被害を生じさせます。2022年12月には北海道紋別市で、この着氷被害により雪や氷の重みで電線が切れてしまい、市街地で2日間ほどの停電が発生しました。また、屋根の雪かき時に事故が発生し、亡くなってしまう人も毎年後を絶ちません。国内では、雪によって毎年100名以上亡くなっている現状があります。
被害をなくすために必要な雪の観察と研究
雪害を減らすために必要なのが、気象予報とそれに伴う雪質変化の予測精度向上です。その基礎となるのが、さまざまなエリアで積もった雪(積雪)の状態をつぶさに観察し、雪の特性を深く知ることです。降り積もった雪の断面を見てみると、雪粒子が積もったときの状況の違いによって地層のようなグラデーションが見て取れます。そのような雪の変化を調べてデータを蓄積することで、雪の状態変化を予測可能にするシミュレーション手法の確立につながります。これにより、雪害の起こりそうなエリアを事前に特定できます。
SNSの分析で雪害の情報発信精度の向上
また、雪害予防には情報発信の精度向上も必要です。そのためにも、SNSの分析が役に立ちます。災害につながりそうな降雪が続く際に、SNS上で誰がどのような言葉を発信しているのかをテキストマイニングで分析することで、多くの人に提供すべき情報の要素を明らかにできます。世代によって情報を取得するツールが大きく異なる時代だからこそ、今後はテレビなどだけでなく、SNSなどを通じた雪害情報の発信も必要となっていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
北見工業大学 工学部 地球環境工学科 環境防災工学コース 准教授 白川 龍生 先生
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