スポーツ工学の目で見るスキーの研究
ロボットを使ったスキーターン実験
スキーヤーはどのようにターンをするのでしょうか? 板の角度やタイミングなど滑りを左右するいくつかの要素が変わると、どのようなコースを滑るのでしょうか? スポーツ科学の動作解析ではアスリートの体にセンサをつけて測定したりもしますが、基本的に人間は再現性のある動作ができません。個人差もありますし、無理な動作をすると転倒する危険もあります。そこで、検証用のロボットを作り、純粋にターンに必要な動作を調べる方法がとられます。
スキー板の開発と雪面特性評価実験
スキーをするとき、雪面と板の間にはどんな力が作用しているのでしょうか? 滑った跡は雪面上にどのように作られるのでしょうか? これには、さまざまなセンサをスキー板に取りつけ、スキー滑走実験を行ってデータを集めます。どういう雪質の雪面でどういうターンをすると、板はどうたわむのか、圧力分布はどう変化するのかについて調べるのです。得られたデータはスキー板の開発に役立ちます。また、雪氷学の専門家とともに、雪や氷の摩擦や変形特性などについても調査が進んでいますが、なぜ雪がよく滑るのかについては、実は今もまだ結論が出ていない課題のひとつです。人工降雪機で作った雪を使って低温室でも実験が行われています。
南極物資輸送や雪害対策も
ほかにも、南極では雪上車と橇(そり)を使った物資輸送実験も行われました。これはスキー板の研究の延長にあるテーマでもあり、橇の「ランナー」という雪上を滑走する部分の改良につながっています。雪氷、滑走についての研究は、滑りにくいことを性能向上の目的とする自動車の冬用タイヤなどの開発や、屋根雪や着雪などの雪害対策にもつながっているのです。
何かを作ろうとするときは、例えばその形や素材を決める過程で、どのようなものがベストかを実験によって確かめます。試作物をある条件で動作させ、作用力や温度をセンサによって計測するなどし、状態を定量化することが求められます。ものを作って試して測って壊す、この繰り返しです。
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先生情報 / 大学情報
公立小松大学 生産システム科学部 生産システム科学科 教授 香川 博之 先生
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