煩雑な分析操作を流れの中で自動化する
細管内の「流れ」を利用したフロー分析
「分析化学」と言うと、たくさんの試験管やフラスコなどの容器に試料(検体)を入れ、さまざまな試薬を加え、分析機器へと移してそれぞれの反応を見るといったものをイメージしているのではないでしょうか? このような分析法では、試料の数に応じた容器が必要で、時間も手間も費用も膨大にかかってしまいます。また、人の手間が多いほど、試料や試薬から有害な物質や微生物に暴露される危険も高くなります。
このような背景のもと、特に臨床分析や環境分析の分野で、自動分析法の開発が進んできました。その中でも、微細な流路の中に調べたい液体や気体を次々と流し、流れ系内で試薬との混合・反応を行い、どのような変化が起こったかを下流で測定する「フロー分析法」は、理・工・農・医・薬など幅広い分野で活発に研究されています。
コンピュータ制御でより精密&迅速に
近年のフロー分析の発展に拍車をかけたのが、安価で高性能なパーソナルコンピュータの普及です。微細流路への試料の導入量や流れの速さ、試薬との混合のタイミングや反応時間などを厳密に制御でき、信頼性の高いデータが得られます。検出器からの検出信号をディジタル処理してコンピュータに取り込めば、複雑な計算や表・グラフの作成も自動的に行えます。データをリアルタイムで解析し、装置制御へとフィードバックすることにより、常に最適な分析条件のもと、高い効率を発揮させることも可能になります。人間とは違って、長時間の作業にも疲労を感じないところもコンピュータの長所と言えるでしょう。もちろん、新しい分析法を創案するためには、コンピュータのプログラムも開発しなければなりません。困難をともなうこともありますが、それだけにチャレンジングな仕事と言えるでしょう。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
徳島大学 薬学部 教授 田中 秀治 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?