データとモデルの両輪で自動車交通を支えるデータサイエンス

高速道路を監視する「トラカン」
高速道路で見かける「渋滞○○キロ」という表示は、通行する車の台数や速度を自動で計測する「トラフィックカウンター(トラカン)」と呼ばれる装置から得られる車両データを基にしています。以前は、道路に埋めたループコイルで車の通過を検知していましたが、メンテナンスの手間や耐久性の問題がありました。近年は、レーダーやレーザーの反射を利用した検知器が使われるようになり、地上での検知が可能になっています。その精度は99.8%と非常に高く、道路管理会社の基準95%をはるかに超えるレベルです。
車の形も認識できる
レーザーの反射を利用する「LiDAR」方式は、昼夜を問わず安定して動作し、霧や雨などの悪天候にも比較的強いという特徴があります。しかも、車の表面にレーザーが反射した点の集合を分析することで、車の形状を三次元データとしてとらえられます。これを使って、トラックやバス、乗用車などの種類を見分ける技術や、同じ車線を複数の車両が走行する場合でも正確に検知する技術が開発されています。
また、AIを使って識別精度を高める取り組みも進んでいます。実用化のためには、雨や雪などの悪天候下でも安定して動作し、高温や低温など過酷な環境にも耐えうる頑強なシステムを構築することが必要です。そのための検討も進められています。
二つのアプローチの融合
このように、データを採取して分析し、そこから得られた情報を活用するのが、データサイエンスの「データアプローチ」です。ただし、交通に役立てるためには、データアプローチだけでなく、社会の仕組みを数理モデルで表現する「モデルアプローチ」も欠かせません。例えば、都市交通シミュレーションや災害時の避難経路最適化などがこれに当たります。データアプローチの強みである実データからのパターン発見と、モデルアプローチの強みである仮説検証や予測を融合させることで、社会課題解決のためのより強力なツールが得られるのです。
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富山県立大学情報工学部 データサイエンス学科 准教授松本 卓也 先生
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