医学や薬学、栄養学に通じる、人体のメカニズムに迫る細胞生物学
病気になるメカニズムは未解明
人が病気になるときには、どんな仕組みが存在するのでしょうか? 病気になる要因のひとつとして、「糖化」や「酸化」が注目されています。糖化とは余分な糖がタンパク質と結びつくこと、酸化とは物質から電子が奪われることで、結果、反応性の高い活性酸素などが生じます。糖化が体に与えるストレスを糖化ストレス、酸化の場合は酸化ストレスといいます。
これらのストレスは、糖尿病や骨粗しょう症、アルツハイマー、がんなどの要因になると言われています。しかしながら、これらのストレスが細胞にどのような変化を与え、病気を惹き起こすのかといった実際のメカニズムは解明されていません。
食品の有効成分の活用
こうした疾病を予防し、健康を保つために有効な食物成分があります。ポリフェノールやイソフラボンなど、体にいいとされている成分が本当に有効なのか、どのように生体に反応しているのかを細胞レベルや遺伝子レベルで調べることで、人体に与える栄養成分の有効性の詳細が見えてきます。作物によっては、捨てられる葉や茎に有効な成分が大量に含まれているケースがあります。それを加工食品に活用すれば、効果的に糖化や酸化を抑えることができ、廃棄物も減らせてSDGsにもつながるでしょう。
多様な角度からより有効な方法を探る
さらに、有効といわれる果物やお茶、キノコ類などの育成方法や加工法を変えることで、成分が変化するかもしれません。栽培方法や加工法によって、有効な成分をより多く生成できることが科学的に証明できれば、農業にインパクトを与え、地域活性化につながります。何より、多くの人が効果的に健康維持に努めることができるようになります。
人間の細胞や食物成分が持つ機能はどのように保たれ、変化するかなどを含め、地球に存在する物質を解析するのが分析化学です。この分野は医学や薬学、栄養学、農学など、幅広い分野と関連し、それぞれの学問分野を発展させる可能性を持っています。
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先生情報 / 大学情報
静岡理工科大学 理工学部 物質生命科学科 准教授 髙部 稚子 先生
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