食品から宇宙まで 測って世界を発展させる分析化学

食品から宇宙まで 測って世界を発展させる分析化学

社会の発展の陰に分析化学あり

化学の分野の一つに「分析化学」があります。化学的な方法で液体、気体、固体、さまざまな物質を検出・特定し、その量や大きさなどの状態を「測る」方法を研究します。ほとんどのものづくり企業には分析部門があり、製品開発や品質管理で化学分析を行っています。また、犯罪捜査、公衆衛生といった行政の仕事、宇宙から持ち帰った鉱物の調査など自然科学系の研究にも化学分析が必須です。社会の進歩発展の背景には、分析化学の研究があると言っても過言ではありません。

難しかったドレッシングや乳液の分析

現在では、クロマトグラフィー、質量分析、レーザー分析など、分析の方法がたくさん開発され、さまざまなものを測れるようになりました。しかし、測れないものはまだまだたくさんあり、新しい分析手法は常に研究が続けられています。
例えば、「エマルション」の質量分析はこれまで難しいとされていました。エマルションとは、振った直後のドレッシングや化粧品の乳液のように、水と油が混ざった状態のものです。質量分析はよく使われている分析方法で、分子固有の質量を調べることで物質を特定しますが、これまでは水と油を分離しなければなりませんでした。しかし、試料の分析装置への導入方法を工夫することで、水と油が混ざった状態のまま分析ができるようになり、分析効率や精度が向上したのです。

匂いを客観的に評価するには

もう一つの測れなかったものの例が、人が感じる「匂い」です。例えばお米の品質について、でんぷん量などの分析で味や食感を数値で評価できましたが、匂いを数値化することは難しいとされてきました。
そこで、炊き立てのご飯の湯気に含まれる物質の分析方法が開発され、品種の特徴づけに利用されています。また、いろいろな食品を食べた時の人の呼気を調べて客観的、数値的に「匂い」を評価する方法が開発されました。こうした技術は、農産物のPRなどにも役立っています。

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先生情報 / 大学情報

福井大学 工学部 物質・生命化学科 教授 内村 智博 先生

福井大学 工学部 物質・生命化学科 教授 内村 智博 先生

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分析化学

先生が目指すSDGs

メッセージ

分析化学ではさまざまな知識が必要です。高校生の頃は「数学や物理は実際にはどのように役立つのだろう」と思っていましたが、今は必須だと感じます。また、分析する対象や関わる業界ごとに新しい知識が必要になります。研究対象には身近な製品や物質も含まれるので、例えばかつて料理や家事などについて親から聞いたことや、いろいろな遊びの中で覚えたことが役に立つことがあります。もちろん、その道の専門家からも学びます。いろいろなことに好奇心を持って学び続けられるなら、分析化学の研究は向いていると思います。

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本学は教育学部、医学部(医学科、看護学科)、工学部、国際地域学部の4学部からなる国立大学です。「創造力、実践力」をキーワードに、本学で学んだ学生が生涯にわたって創造力や指導力を発揮できるよう、学びの力となる学問の基礎及び方法の習得をめざします。先端研究に支えられた教育内容と、不断の省察による教育技術によって、学生がそれぞれの個性に目覚め、社会に貢献できる実践的知識と技術を習得して卒業する事を目標とします。就職率は複数学部を有する国立大学で11年連続ナンバー1の実績があります。(H19-29年度)