温度や湿度、照度などを利用した屋内での位置推定
GPS衛星を使った位置推定は屋内にはむかない
車で走行中に使用するカーナビは、GPS衛星から送信された信号を受信して現在位置を推定しています。スマートフォンや携帯電話などにもGPS機能を搭載し、目的地までのアクセスの仕方、位置情報を使うゲーム、運動で移動した距離の測定など、位置情報を利用したアプリケーションがたくさん提供されるようになりました。しかしこれは屋外だからできることです。屋内にはGPS衛星の信号は届きにくく、位置推定は困難です。
温度や湿度の違いを位置推定に利用
屋内では、無線LANを活用した位置推定の技術開発が進んでいます。しかし、電波は壁などの障害物に当たると反射し、反射された電波が重なりあうと距離に関係なく大きく変動するため、電波だけで正確な位置を推定するのは難しいのです。ところで、照明器具やエアコンは設置場所が決まっているので、照度、温度、湿度や気圧など、位置に依存している複数の情報をセンサ(感知器)によって計測し、そのデータを位置推定に活用しようという研究を行っています。電波だけよりも位置推定の精度が上がることは実証されており、今後は場所や時間帯、建物の構造体なども条件に加えながら、ビッグデータやAI(人工知能)の活用も視野に研究を進めています。
スポーツの可能性も広げる
2019年に日本で開催されたラグビーワールドカップでは、選手の活躍はもちろん、ユニフォームの背中に入っていたGPS装置が話題になりました。選手個人の走った距離や動きの変化などを測定し、そのデータを基に選手交代や戦術変更などに活用していたのです。練習時にも装着し、選手それぞれのコンディションを把握してトレーニング内容を調整するなど、けがの予防にも役立っています。
IoTの普及にともない、得られる情報の種類も量も増加します。今後は屋内環境においても、より高精度な位置推定を行うことが可能になり、GPSを使えない屋内スポーツでの導入も進むと期待されます。
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東北工業大学 工学部 情報通信工学科 教授 工藤 栄亮 先生
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