水素社会実現に貢献! 燃料電池の開発を支える電磁界センサ
水素社会に向けて注目を集める燃料電池
地球温暖化の原因になっている大気中の二酸化炭素を減らすために、エネルギー源として化石燃料の消費を減らして水素を使う社会にしていこうという動きがあり、水素と酸素を結合させて発電する「燃料電池」が、次世代の発電方法として注目されています。
そのため、燃料電池車や家庭用燃料電池の研究開発が盛んに行われています。その際に重要になるのが発電状況をモニタリングする技術です。開発や生産の段階で、きちんと発電できているかをみて改良する必要があるからです。
燃料電池の発電状況をモニタリングする
燃料電池の発電状況のモニタリングには、加速器やMRIを使用する方法もありますが、装置が大きく、企業の開発・生産の現場では使いにくいという難点があります。そこで、スマートフォンやゲーム機のスティック状コントローラーにも組み込まれているような、小さな「磁界センサ」を使用する方法が研究されています。電流が流れると、その周囲に磁界が発生します。逆のこの磁界から電流値が計算で求められます。この原理を利用して、燃料電池の周りの空間に分布している磁界を測定し、その磁界分布から燃料電池内部の電流分布を求めるといった方法です。
電磁界センサとAIで発電分布図を生成
燃料電池では、特殊な薄い膜(電解質膜)の表裏面に水素と酸素をそれぞれ接触させて電気を発生させますが、この膜内の位置によって発電量にばらつきがあります。電流の周りには磁界が発生するため、発電状況によって燃料電池周囲の磁界が変化します。それをいくつもの磁界センサで計測し、AI(逆問題解析)を使用して計算すると、膜上の発電分布を図としてみることができるのです。現在は、できるだけ安価な装置にするために、磁界センサの数を減らしても高い解像度で発電状況を推測できるAIの計算アルゴリズムも研究されています。
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大分大学 理工学部 理工学科 知能機械システムプログラム 教授 後藤 雄治 先生
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