人間の身体の仕組みをモデル化した「デジタルヒューマン」とは?
人間の身体の動きを機械工学で分析する
人間の身体は、骨や筋肉、神経など、数多くの組織や器官が連動することによって、さまざまな動きを生み出します。こうした人間の身体の制御の仕組みを分析していく際には、機械工学のセンスや方法論が大いに役立ちます。こうした研究分野は、バイオメカニクス、ヒューマンダイナミクスなどと呼ばれており、今も世界各国で活発な研究が進められています。
人間を数理モデルで再現
人間の身体には、大小合わせて約600もの筋肉が存在します。例えば、人間が歩く時、それぞれの筋肉にどのような力が加わっているのか、筋肉の活動状態を直接的にセンサーなどで測定することは現実的には難しいですが、工学的な方法論を用いると体の動きから筋肉の活動状態を詳細に知ることができます。さらに脳神経による筋肉への運動指令の仕方までも工学的に解明すれば、人間が歩く仕組みを数理モデルで表すことができるようになるのです。コンピュータ上で人間の身体の動きを再現できるこの数理モデルは「デジタルヒューマン」などと呼ばれています。
さまざまなシミュレーション
デジタルヒューマンを利用すると、さまざまな仮想の条件下で、人間の身体がどのように動くのか、というシミュレーションが可能になります。例えば、義足などの健康福祉用具の設計を行う場合は、どのような素材や機構にすればより快適で便利なものになるか、試作前にコンピュータ上でシミュレートして設計を検討できるようになります。怪我や障がいからのリハビリの計画を立てる際は、デジタルヒューマンによってモデルを作成し、どの程度の動きでどのようなリハビリ効果が得られるかを予測できるようになります。また、スポーツ指導の分野では、選手に正しいフォームなどを身につけさせるためのツールとしての活用が期待できるでしょう。
このように、デジタルヒューマンによる研究成果は、私たちの生活のさまざまな部分で活用できるものなのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 教授 長谷 和徳 先生
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