脳のリハビリテーションー脳を活性化させるには?ー

脳のリハビリテーションー脳を活性化させるには?ー

イメージ・トレーニングをリハビリに生かす?

スポーツ競技をするアスリートは、よく競技前に頭の中でイメージ・トレーニングをします。自分が競技で活躍している場面や、うまくやれている時の動きをイメージすることで、実際の競技でもよいパフォーマンスを発揮できると言われています。このイメージ・トレーニングは「メンタル・プラクティス」とも呼ばれ、これを例えば脳の血管が詰まる脳卒中のリハビリに生かせないかという研究が進められています。

左脳の代わりに右脳が働く?

脳卒中になると、手足のまひや感覚がなくなるなどの後遺症が起こるので、理学療法ではまひした手足がスムーズに動くようにするリハビリを行います。そこで脳卒中の患者ではありませんが、大学生に小さなボールを手のひらで転がすトレーニングをしてもらう実験が行われました。頭の中でイメージ・トレーニングをした時の脳波計を見ると、手を動かす部位の脳が活性化していることがわかりました。さらに、実際にボールを転がすパフォーマンスが向上したという結果が出たのです。
また脳は損傷した部位の役割をほかの部位が代わりに務めることもあります。海外では、言語の機能をつかさどる左脳を摘出して話せなくなった患者にリハビリをしたら、数年後に話せるようになったという事例があります。つまり、リハビリによって右脳が活性化されたことで、無くなった左脳の役割を右脳が果たすように変化したと考えられるのです。

正解がない脳卒中のリハビリ

病気やけがをした人の運動機能のリハビリを支える理学療法士には、体の運動機能だけではなく、脳や中枢神経についての専門知識も求められます。どのような内容のリハビリをどの順序で進めていくかなどが任される、とても責任のある職種です。特に脳に関してはまだまだわかっていないことが多く、脳卒中などのリハビリには正解がないと言われています。言い換えれば中枢神経の理学療法は、今後の発展が期待できる分野だと言えるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

常葉大学 健康科学部 静岡理学療法学科 講師 梅野 和也 先生

常葉大学 健康科学部 静岡理学療法学科 講師 梅野 和也 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

中枢神経障害理学療法学、認知脳科学

先生が目指すSDGs

メッセージ

理学療法士というと、スポーツ選手のけがに対してリハビリテーションを行う仕事、というイメージかもしれません。しかし、それ以外に脳卒中・認知症・ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの脳や神経に障がいのある患者さんへのトレーニングも幅広く行っています。仕事自体も自分の知識を生かし、考えて、工夫できる、医療分野の中では比較的自由度の高い職種です。自分が関心を持ったトレーニングを、患者さんに提供することも可能です。脳や神経中枢などに興味があるなら、理学療法学を進路選択の1つに考えてもらえるとうれしいです。

常葉大学に関心を持ったあなたは

2013年4月、常葉学園大学・浜松大学・富士常葉大学の3大学を統合し、新たに法学部[法律学科]、健康科学部[看護学科・静岡理学療法学科]を加え10学部を擁する「常葉大学」が誕生しました。3大学を統合することにより、各大学が培ってきた教育成果を融合。スケールメリットや学部・学科の多様性を生かし、教育研究活動全体の質の向上を目指します。
「知徳兼備」「未来志向」「地域貢献」の3つを教育理念に掲げ、未来の国や社会のために真に広く貢献できる人材を育成します。