「やりたいこともやるべきこともある幸せ」を支える作業療法
1日はいろいろな作業で成り立っている
作業療法の「作業」とは、人が生活の中で行う活動のすべてです。私たちの1日は、朝起きる、顔を洗う、食事をする、学校へ行く、友達と遊ぶなど、いろいろな作業の連続で成り立っています。
作業療法士は、なんらかの理由でこれまでしていた作業やこれからやりたい作業で生活を形作ることが難しくなった人をサポートします。病気やけが、加齢のほか、進学、就職、定年退職、災害、コロナ禍といった大きな環境の変化も、生活がくずれて、作業ができなくなるきっかけになり得ます。
やりたいことだけやれば幸せとは限らない
健康で幸せな毎日をおくるには、やりたい作業(願望)とやるべき作業(義務)がバランスよくあることが大切だと考えられています。やりたいことだけやれば幸せとは限りません。やるべきことがあるから生きがいやアイデンティティを感じられることもあるのです。
願望でも義務でもある作業は価値が高いとされています。重要なのは自分がその活動をどうとらえるかです。高齢者は義務の作業が少ないようにみえますが、例えば趣味のガーデニングを「きれいな花を近所の人も喜んでくれる→自分がやるべきだ!」ととらえると、ガーデニングが生きがいになります。勉強も「将来の夢をかなえるため」と考えれば、願望&義務の作業になるでしょう。
心と体、環境にもアプローチ
病気や障害があったり、ひきこもり生活になったりすると、やりたい作業もやるべき作業もなくなって、心身の健康が失われてしまいます。作業療法士は「以前はどんな活動をしていましたか?」などとコミュニケーションをとりながら、そのような人が自分にとって価値のある作業を見つけるお手伝いをして、その作業の実現をめざします。環境づくりも作業療法士の役割の一つで、例えば発達に遅れのある子どもが落ち着いて授業を受けられるように、学校に働きかけたりもします。
作業療法は、やりたいこともやるべきこともある幸せを支えるために、本人の心と体、そして環境にもアプローチする仕事です。
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