医療や食を守る「お知らせ機能」をもった小さな粒

医療や食を守る「お知らせ機能」をもった小さな粒

金属が細かくなるとどうなるか

金(Au)が常に金色に見えるわけではない、と言ったら驚くでしょうか。金をナノサイズ(1ナノは10億分の1メートル)まで細かくすると、見た目の色は赤色になります。このようなナノサイズの金属と、生き物が持つ「認識機能」を利用して、いろいろなものが検出できる「バイオセンサ」がつくられています。

金のナノ粒子が薬の効き目を判定

例えば、金のナノ粒子を使った、薬の効き目を判定するバイオセンサが開発されました。これは、金のナノ粒子とタンパク質が入ったバイオセンサに薬を入れると、タンパク質と薬が結合し、効き目があれば金のナノ粒子と固まります。するとセンサの色が赤から青に変わるのです。薬に効き目がなければ、タンパク質と金のナノ粒子は結合せず、センサは赤色のままです。
このバイオセンサの利点は、手軽に使えて、しかも薬の効き目が以前よりも素早くわかる点です。いま薬の開発現場で薬の効き目がわかるのに半日くらいかかっているものが、わずか30分ほどで判定できるのです。薬剤メーカーは、何万種類もの候補から一つの薬を創るので、実用化されれば、迅速な効果判定により開発のスピードアップと大幅なコスト削減が見込めます。

銀のナノ粒子で食中毒の原因を発見

一方、銀(Ag)のナノ粒子を使ったバイオセンサも研究されています。細菌の中には栄養不足に陥ったとき、「芽胞(がほう)」と呼ばれる硬い殻に遺伝子を残して生きのびようとするものがいます。この芽胞の中には強い毒性を持つものがあり、それが食品などに混入したら、食中毒を引き起こす原因になります。そんな事態を防ごうと、食品工場などで芽胞を簡単に検出できる、銀のナノ粒子を使ったバイオセンサの開発も進められているのです。
このようにバイオセンサの技術は、医療や食など、私たちの日常生活を守るための「お知らせ機能」として活躍が期待されています。

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九州工業大学 大学院生命体工学研究科 生体機能応用工学専攻 准教授 池野 慎也 先生

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メッセージ

「考える習慣」を身につけてください。なぜなら大学の研究では、正解のない問題を考え、それを答える力が必要になるからです。日頃からぜひ仮説を立てて、検証することを習慣づけてください。スポーツの結果でも何でもいいですので、「どうなるかな?」と予測して、結果が出たらその理由を考えてみることで、思考力は鍛えられます。結果だけに目を奪われると、得られるものは多くありません。結果に至るまでのプロセスを大切にして、努力を続け、将来大きな花を咲かせてください。

九州工業大学に関心を持ったあなたは

九州工業大学大学院生命体工学研究科は、北九州市若松区の北九州学術研究都市内に2001年に開学しました。生命体工学という新しい分野を創成し、生物の持つ、省資源、省エネルギー、環境調和、人間との親和性等の優れた構造や機能を解明し、それを工学的に実現し応用することのできる技術者や研究者の育成を目標としています。また、本研究科では様々なプロジェクトに取り組んでおり、ロボットによるサッカー競技会への参加やトマト収穫ロボット競技会の企画等を通じて、「自然とロボットのあり方」について研究を進めています。