「100万分の1ミリ」の世界が、ものづくりの可能性を無限に広げる
「金」の粒子は、金色ではなく赤かった?
金や銀の粒子が何色か知っていますか? 「金は金色、銀は銀色に決まってる!」と思うかもしれません。しかし、金、銀の粒子を「ナノ」スケールまで小さくすると、金はまるで赤ワインのような色に、銀は鮮やかな青に見えるのです。100万分の1ミリというナノの世界では、私たちがふだん目にしている世界とは異なる現象が発生します。その物質特性を活用したり、ナノスケールの物質を操作・制御したりする技術が「ナノテクノロジー」です。
ナノサイズの3次元加工も可能に
「MEMS(メムス)」という言葉を聞いたことはありますか。「マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ」の略で、センサーや駆動装置と電子回路とを、1つのチップに集積した超小型装置のことです。
すでに、医療、工業などの分野で活用されているMEMSの技術ですが、さらに高度化させることで、現在以上に高精度・高機能な装置を作り出すことが可能になります。
今以上の「超精密加工」を実現するため、ナノサイズの粒子を電気や磁気で操作し、加工したい物体を削りながらナノスケールで3次元加工する、「サイクロマシニング」技術の研究もスタートしました。
日本の「ものづくり」を発展させるナノテクノロジー
ナノスケールの超精密加工を進歩させることで、夢のような製品や設備が現実のものになるでしょう。
例えば、鉛筆の芯などの材料である炭素は、ナノの世界では比較的高い温度で「超伝導(電気抵抗がゼロに近い)」状態になることがわかっています。この性質を活用すれば、リニアモーターカーや病院のMRI(磁気共鳴画像)装置など、超伝導を用いている設備を、今より小さく安価に作ることができます。MEMS技術が高度化すれば、皮膚に当てた光の反射率だけで、血液成分を調べられるような、画期的なセンサーも実用化できるかもしれません。近い将来、日本の「ものづくり」は、ナノテクノロジーによって大きな飛躍が期待されているのです。
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